第31回 白酒ひとり 2013年1月16日 国立演芸場 開口一番、前座さんは柳家さん坊で『小町』。この会は前座さんにもマクラを振るようにと言われるらしい。自分の家のカレーの隠し味は大量のケチャップだったという話をして、「落語の方でも、登場人物は隠し味となっておりまして」と始めたものだから、ドッと笑いが来る。なんとも無理矢理なこじつけで噺に入ったなぁという感じから来た笑いらしい。前座就業、頑張ってね。 桃月庵白酒一席目。マクラいつものように落語界のことを茶化している。白酒のこういう話を毒舌と取る人もいるが、あまりそう感じさせないのは、話し方が「・・・でございます」だからかもしれない。この辺が立川談志のものとはちょっと違う。うまーく、オブラートに包んでいるから嫌味が無い。落語界の事が一段落すると、今度は相撲を茶化し始める。砂かぶりで、ある相撲取りの横に座った話やらで笑いを取ると『花筏』へ。噺に入っても「・・・でございます」の口調は変わらない。マクラもネタも同じように話す。これがこの人の自然体の話し方になっていて、噺に引き込んでいく。上手いな。 二席目の前に前回のアンケートでの質問に答える、桃月アンサー・コーナー。インターネットには書きにくい回答が多かったあと、忘年会、新年会の質問から答えて、今年の一門新年会で酔っぱらったエピソードなど。そこから無礼講で呑む酒は、からみ酒になりやすいいう話に持っていき、喧嘩、そして夫婦喧嘩の場面から始まる『天災』へ。『禁酒番屋』での「どっこいしょ」を「ドイツの将校」とやって、すっかり聞き間違いネタが有名になってきた白酒。『天災』でもこの手のクスグリが入る。心学の先生紅羅坊奈丸の名前が憶えられなくて、「ブラボーのムニエル」。本人を目の前にしても「マニエル」にしてしまう。「助っ人外人ではこざいません」。ネタ振りのあとの回収のところでも「堪忍」が「杏仁」になってしまう。「杏仁の豆腐をザルにあけ、崩れたら食え、崩れたら食え」は可笑しい。 仲入り後は、スッと『妾馬』。殿様がお呼びで、「うまくすると、お目録くらいはいただけるかもしれない」と言われて八五郎、「ヘラクレス?」「一字も合ってない!」 この聞き違い遊びは、いったいどこまで行くのか。白酒を聴く楽しみになってきた。八五郎が酔っぱらって、しんみりと妹に語りかける部分はカットして、ひたすら笑わせて終える。二席目のマクラで、落語家の酔っぱらった醜態を茶化していた白酒。噺の世界では、八五郎に、上の者にあまりみっともない様を見せたくなかったのかな。 1月16日記 静かなお喋り 1月16日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |