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客席放浪記

鎌倉はなし会/桃月庵白酒独演会

2013年5月4日
鎌倉芸術館小ホール

 朝呂久から二ツ目になって半年の春風亭一蔵は引っ張りだこだねぇ。ホール落語で安心して聴ける実力をすでに身に着けているものなぁ。今日の『猫と金魚』だって安定しているもの。猫を捕まえてくれとカシラに頼むと、このカシラ、威勢はいいのだけど猫が大嫌い。「いつ捕まえればいいんです?」「今でしょ!」

 桃月庵白酒の一席目は『親子酒』。白酒の『親子酒』の酒好きのお父さんは、どことなくカワイイ。どうしてもお酒が飲みたくて、おかみさんにさりげなく「呑ませてくれ」と訴える様がいじらしい。「そんな憐れんだ目で見るなよ」って、これも酒呑みのサガだね。おかみさんを「きれいだよ」と褒めるのも酒を貰うための方便らしい。それでも湯呑み一杯で収まらないのが酒呑み。わかっちゃいるけどやめられないとは、よく言ったものだ。

 二席目は『お見立て』。適当な墓を選んで「これが喜瀬川花魁の墓です」と誤魔化す番頭。杢兵衛大尽が戒名を見てみれば、立川雲黒斎家元勝手居士。タイヘンな墓を見立てちっゃたね。ウハハハハ。

 仲入り後は、紙切りの林家正楽。今日は寄席のときとは違って時間がたっぷりある。鋏試しも、相合傘、菖蒲の二枚。お客さんからの注文は、富士山、銭湯、鯉のぼり、鎌倉、尖閣列島と五つ。さらにはOHPを使って美空ひばり劇場。『柔』ではゴジラを投げ飛ばし、『真っ赤な太陽』では本当に真っ赤な太陽を出して見せ、『ひとり酒場で』では湯呑み酒を持つ細かい手の動きが笑いを誘う。圧巻だったのは『川の流れのように』。川をいろんな人物が舩に乗って通り過ぎていく。サザエさんファミリー、ミッキーマウス、ゴジラ、松井秀喜、イチロー、ダルビッシュ、荒川静香・・・そして、最後に・・・牧伸二。笑いが溜息に変わり拍手が起こった。

 白酒という人は二ツ目のころからカワイイ子供を演じるのが上手かったが、大人も可愛くなってきた。『親子酒』のお父さんもそうだが、トリの『寝床』の旦那もカワイイ。ヘソを曲げて、「私はもう(儀太夫を)語りません」と言いだす旦那と、「ぜひ語ってください」と言う店の者。「それでは、今日は儀太夫は無しということで」と済まそうとする店の者に、「どうして、『そこを何とか』と言えないんだ」と縋る旦那。可愛いったらない。始まったら始まったで、飽きれて『天国への階段』や『パイプライン』を弾く三味線のお師匠さん。みんなバカバカしくもカワイイんだよねぇ。

5月5日記

静かなお喋り 5月4日

静かなお喋り

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