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客席放浪記

第34回白酒ひとり

2013年7月18日
国立演芸場

 開口一番前座さんは、秋に二ツ目昇進予定の林家木りん『金明竹』。前座修業もう少しでゴールですね。

 満員御礼のこの会、相変わらずの人気だ。
 受付で桃月庵白酒の出るチラシをたくさん受け取った。主に今月と来月にある会のチラシ。もう目前に迫っている。
 「今頃でもチラシを配るということは、売れ残っているんですよ」とマクラで本人は涼しい顔で言う。自分が主催でないものは、基本的にギャラを受け取るだけだからどうでもいいらしい。そのへんの茶化し方が白酒の白酒らしいところ。やたらキャパが広いところだったり、都心部から遠いところは、やはり苦戦しているようだ。
 そんな子供っぽいところのある桃月庵白酒の一席目の『鰻屋』も、職人に逃げられてしまった鰻屋をからかってやろうという意地悪な視線から描かれる。鰻を捌く職人がいなければ商売ができないと暖簾を仕舞おうとしている主人のところに無理矢理に押しかける。
 この主人がまた、商売だというのに鰻を掴むのが大嫌い。触って「気持ち悪い!」。
 「それ言ったら、いけないだろ!」とのツッコミも可笑しい。

 お客さんからの質問コーナー“とうげつアンサー”でも「踊りはやらないんですか?」の問いに「地方ではやりますよ」と言いながらも「(私のように)太った体型の者が躍ると、着ぐるみが躍ってるみたいになっちゃうんですよ」と自虐的な笑いを取っていた。
 二席目が『千両みかん』。これまた、何か悩みがあるらしく寝込んでいる若旦那のところへ理由を訊きに行く番頭さんの様子が、若旦那をからかってやろうという様子ありあり。寝ている若旦那を明るく揺り起こして、窓を全て開け放す。空を見上げて「お〜い雲! どこへ行くんだ〜い!」 あきらかに天然というよりは、若旦那をからかって遊んでいる。

 仲入り後、三席目。マクラの富士山が世界遺産登録されるという話題も白酒にかかると、「なんでも再来年あたり富士山は噴火するんじゃないかって話もあるようで、そうなると文化遺産取り消しですかね」とくる。「先代の小さん師匠が人間国宝に選ばれたとき、小さん師匠が『ボケたら取り消しかなあ』と言ったら、それを聞いていた全員が固まってしまった、ということがありまして」と、これまたいたずらっ子の顔をのぞかせる。
 『大山詣り』で、丸坊主にされた熊さんが復讐に出るのだって、なんだか子供っぽいいたずらごころみたいなもの。

 だから白酒の落語は、シコリが残らない。子供のいたずらを眺めるような楽しさを味わって会場を出られるのだ。

7月19日記

静かなお喋り 7月18日

静かなお喋り

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