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客席放浪記

第36回白酒ひとり

2013年12月3日
国立演芸場

 桃月庵はまぐり『道灌』。白酒の弟子。初高座だそうだ。まだ見習い。どうして初高座とは思えないほどしっかりしている。前座修業がんばってね。

 続いてW前座という形で柳家さん坊。この会ではお馴染み。北海道別海町の酪農農家出身で、今回も牛、馬、ポニーに乗ったなんていう、のどかなマクラから『牛ほめ』。彼らしい工夫があって楽しい。前座のうちは余計な事やっちゃいけないと言われるそうだが、いいじゃない。お客さんだって、毎回同じ前座噺聴かされて、うんざりしているんだから。

 桃月庵白酒一席目は『時そば』。まずい方のそば屋は普通、「景気はどうだい」と訊かれると「おかげさまで儲かっております」と返すが、白酒のは借金に苦しんでいるそばやで、「このところさっぱりで、子供が『お腹すいたよ〜、ひもじいよ〜』と泣いておりまして」とくる。そっちの方が、まずいそば屋には合っているかもなぁ。

 とうげつアンサーは、前回のアンケートで貰った質問のお答えコーナー。インターネットには書けない事が多い。書いてもいいだろうことで面白かったのは、客席で気になるお客さんということで、ものを食べたりされるのは浅草で慣れているが、なにやらバッグの中の探し物をしている人がいると気になるとのこと。そうだろうなぁ。そんな人の、隣に座っているだけでも気になるもの。高座からだとそういう人って目立つし、気になるんだろうな。

 二席目は『花瓶』。『しびん』で演る人もいるが、終演後に貼りだされた紙には『花瓶』になっていた。ネタ帖に書くときでも『花瓶』の方がきれいだしね。でも、どちらにしても噺は同じわけで、汚い噺。客席でものを食べている人は、これとか『勘定板』『肥甕』とかは嫌だ。もっとも、落語家の方でも、客席であまりに食べる音が気になると仕返しにやったりして。国立演芸場は飲食してもいいらしいけれど、さすがにこういう会では食べている人はいない。

 仲入り後三席目は『木乃伊取り』。これに出てくる鳶のカシラは毒舌家なところがあり、旦那にズケズケとものを言う。それでいてどこか茶目っ気があるのが白酒と似ている。「根が正直なもので」というのは、それこそ正直な気持ちなんだろう。以前、『ソロモン流』で立川談春が「俺を愛してくれ」発言をしたことを自分の落語会で茶化したことが談春の耳に入ったらしくて、ある落語会で談春と一緒になったとき「お前の胸にある言葉を口に出すな!」と言われた事があると語っていたが、正直に言っただけだよね。
 噺のクライマックスでは、「お・も・て・な・し」まで茶化して怒涛の勢いで最後まで持って行った。

 立川流の一部の落語家が談志の毒舌を受け継いでいるのとは別で、白酒は根が正直ってだけの気がする。

12月4日記

静かなお喋り 12月3日

静かなお喋り

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