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客席放浪記

第38回白酒ひとり

2014年3月19日
国立演芸場

 すっかりこの会に馴染んできた前座さんの柳家さん坊。白酒から、ちゃんとマクラをやれと言われているらしく、前座さんにしては珍しくマクラを聴かせてくれる。私は大歓迎。初めのころは本人も戸惑っていたようだけど、このところうまくなってきたなぁ。わんこそば、マクドナルド店員、新聞に写真が載った話。どれもなかなか楽しかったよ。落語は『つる』

 桃月庵白酒、一席目はあまりマクラを振らずスッと『紙入れ』。おかみさんの様子が色っぽい。なにしろ、浮気をしようなんておかみさんなんだから、色っぽくなくちゃいけない。そう考えると、この噺、男が演るにはなかなか難しい噺なんだよなぁ。

 とうげつアンサーのコーナー。今年、ヨーロッパ公演を控えている白酒、ヨーロッパ公演で演るネタを訊かれて、今演った『紙入れ』とか『親子酒』を考えているそうだが、本人、『親子酒』に関しては外国人は途中で思考停止になってしまう箇所がありそうだと不安をのぞかせていた。『親子酒』は、禁酒を約束した父親が、禁を犯して酒を飲んでしまう噺。呑ませてくれと奥さんに頼み込む。これが外国では通じにくいそうだ。古い日本では男は台所に立ちいるものではなく、女性に燗を付けてお酒を持ってきてもらう習慣があったのだろう。今の感覚だと、どうしてもお酒を飲みたくなった亭主は、自分で台所に入って、お燗をしたければレンジでチンで済んでしまう。あるいは、外に飲みに行ってしまえば済むことで、私もこの噺を聴くたびに、今じゃ考えられないよなぁと思っていた。ヨーロッパの人には、特に伝わりにくいかもしれない。

 二席目は一転、マクラ多め。小噺もふんだんにして『義眼』

 寄席サイズの短い噺二席のあと、仲入り後は大きなネタ『花見の仇討ち』。この噺は三遊亭遊雀のものが絶品だと思うが、白酒が演ると、とにかく登場人物がみんなどことなくカワイイの。助太刀をしようとする侍までカワイイ。毒舌だと言われる白酒のマクラは人気があるが、噺に入ると、出てくる人物がみんなカワイイというギャップがまた楽しい。『禁酒番屋』で「どっこいしょ」を「ドイツの将校」とやって受けている白酒だが、この『花見の仇討ち』も凄いぞ。「巡礼兄弟」が「重量制限」、「親の仇」が「マヤの遺跡」、「チンプンカンプン」が「チンピラプーチン」。狂言の仇討ち場面も、三人それぞれの個性が炸裂して大爆笑。まさにマンガかコントみたいに可笑しい『花見の仇討ち』になっていた。

3月20日記

静かなお喋り 3月19日

静かなお喋り

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