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客席放浪記

第40回白酒ひとり

2014年7月15日
国立演芸場

 開口一番、この会恒例いつもの前座さん、柳家さん坊。どんなマクラをやってくれるのか楽しみだったのだが、あらあら今日はマクラどころか、バカが出てくる小噺をいくつか並べておしまい。与太郎が出てくる噺にでも入るのかと思ったのに。どうしちゃったのかなぁ、また師匠に何か言った人がいたのかな? アハハハハ。

 ヨーロッパ公演から戻った桃月庵白酒。「楽しかったけれど、腹が立つことばかりだった」と、女装したロビン・ウイリアムスみたいなCAの話から、ケビン・コスナーみたいなベジタリアンのガイドの話。そとて、とにかく機内食から、行く先々の料理がことこどく不味かったこと。その反動で、日本に帰ってきて食べた立ち食いそばがうまかったり、旅行中餃子が食べたかったとかで、一日五食食べて、また太ったって話題まで。このマクラをずーっと聴いていたかったくらい。
 一席目は、日本に戻って寄席に出て『壺算』を演ったら、自分でもわからなくなったとのことで、基本に戻ろうと『寿現無』。噺自体へのツッコミを自分で入れながら、ところどころ工夫がある。小学校に上がって、先生が出席簿で出欠をとるところがあった。なぜかこのクラスは寿現無くん以外は政治家と同姓同名の子ばかり。いちいちツッコミが入るのも可笑しい。

 観光はどこへ行っても教会ばかり連れて行かれたというマクラから、神様は神様でも死神と『死神』。死神は死神でも、白酒にかかると、痩せて杖を突いている死神ではなく、小太りの死神。早寝早起きがモットー。ぜーんぜん怖くない爆笑篇の『死神』。呪文は「アジャラカモクレン、副会長。ほんとにそれでいいんですか、テケレッツのパー」。蝋燭のあるところに連れて行かれた男、この呪文をもう一度唱えて死神を消そうとするが消えない。「呪文はもう変えたよ」「じゃあ、アジャラカモクレン、林家正蔵、テケレッツのパー・・・違うか」

 三席目は、テレビ『ザ・ノンフィクション』のナレーターをした話がマクラ。これは私も見た。声を聴いただけでは白酒とは気付かなかった。画面に「ナレーション・桃月庵白酒」の字幕が入ったのでわかったようなもの。ナレーションの台本に、小噺があるので落語家を起用したかったらしい。締めくくりも小噺で、最後に「おあとがよろしいようで」と入る。白酒「今まで、そんなこと言ったことありませんよ」。そうだよなあ、私も誰からも一度も聴いたことない。
 『つるつる』は先代桂文楽のオハコだったなぁ。私は幇間って会ったことが無いが、文楽の落語に出てくる幇間が一番それらしく感じる。で、白酒の幇間だが、白酒自身はどうも自分はヨイショができないと言うが、『つるつる』の序盤、幇間が出てくるところの調子の良さは、スピーデシィで気持ちがいい。そして白酒の落語だから、とにかく人物がどこか無邪気な子供みたい。夜這いに行くみたいな、けっこう生々しい噺なのにマンガになっちっゃてる。そこが白酒の持ち味。落語って、リアルであるより、こういうバカバカしい方が私は好きなのかもしれない。

7月16日記

静かなお喋り 7月15日

静かなお喋

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