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客席放浪記

この落語家を聴け!シーズン2桃月庵白酒

2014年8月5日
北沢タウンホール

 開口一番、前座さんは林家けい木。おっ、新作だ。オレオレ詐欺の噺。サゲが『粗忽長屋』と同じだからだろう、帰りがけに演目が張り出されているのを見たら、『新粗忽長屋』になっていた。

 桃月庵白酒の一席目は『不動坊』。お滝さんがお嫁さんに来ることになって、大はしゃぎの男の様子が、やけに可笑しい。「♪お滝さんが嫁にくる〜」と歌を作ってしまい有頂天。そのまま銭湯に行って、見ず知らずの人をお滝さんにしてしまい、予行演習を始めてしまうハチャメチャ振りは凄い。

 二席目が、先日も聴いた、デブで血色のいい『死神』。とぼけた死神ならば、呪文を教わった男もとぼけている。名医だということになって、アチコチから依頼が来ればセリにかけて、高い値段の方に行く。二百両でも五百両でも一晩で使ってしまう。クライマックスの布団半回転も、カゴメカゴメで、死神が気が付いたときには半回転してしまう。死神とは、人を死に追いやる存在では無くて、死にかけた人を見守る存在なんだという考え方が面白いと思う。

 この落語会は、中で広瀬和生によるインタビューがある。会のどの位置でインタビューをするかは落語家に任されているそうで、白酒は落語が終ってからを選んだ。途中でやって偉そうなことを言ってしまうと、あとの落語がやりにくくなるからだそうだ。
 広瀬和生のインタビューは上手い。やはり雑誌の編集者だけのことはある。
 印象的だったのは、名人と言われた志ん生、文楽といった人は、落語の本道から言うと、いわば亜流だということ。当時、亜流とみられていたものが、人気になったらしい。つまり、今、白酒や一之輔のやっていることは、いわば亜流なのだけれど、実は人気がある。落語はいろんなやり方があっていいものだけど、工夫が無いおんなじようなものをやっていては、飽きられてしまうということなんだと思う。
 今の白酒の、いわば変化球のような落語は、新作をやっていた経験もものをいっているようで、構成力が身に着いているということらしい。これは三遊亭円丈が『ろんだいえん』で語っていることと符合する。最近、一之輔も新作をやったりしているから、やはりこの手の落語家は、そういった構成力に優れているのかもしれない。やはりねぇ、私も新作好きだし、古典でもついつい白酒や一之輔を好んで聴きに行ったりしているから、亜流好きなのかもしれない。

8月6日記

静かなお喋り 8月5日

静かなお喋り

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