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客席放浪記

桃月庵白酒、春風亭百栄二人会 まっぴらごめんねぇPart.3

2015年1月7日
深川江戸資料館

 開口一番前座さんは瀧川鯉ん『ん廻し』。この人の『ん廻し』は二ヶ月前『瀧川鯉昇、柳家喬太郎二人会』でも一度聴いているが面白いなぁ。名前が鯉んだから、この噺はうってつけだ。前座生活三年が過ぎたそうで、もう少しで二ツ目昇進。72キロあった体重が14キロ下がったそうだ。過酷な前座生活とはいえ、かえって健康に良かったんじゃないの?

 桃月庵白酒一席目。寄席の初席興行のあれこれをマクラに。今日は7日で、まだ松の内ということで目出度い噺ということで『寿限無』。こういう前座噺も白酒にかかると、さすがに面白くなる。「寿限無、寿限無」「パイポ、パイポ」と繰り返すところの不自然さを軽く皮肉ってみせたり、「食う寝るところに住むところ」なんて名前じゃないと言ってみたり、まさにそのとおりなんだけど。後半部分にもかなり工夫が盛り込まれているし皮肉もいっぱい。しかし白酒という人の噺はスピーディだ。突っ走っている感じ。これがいつまでも続くかどうかが気になるのだが、そんなのはいらぬ気遣いかも知れない。

 春風亭百栄は、以前は古典一本の人だったし、十年ほど前、新作も始めた時も、まだ古典中心。それがいつの間にか、周りからも新作を望まれるようになってきて、今やどこの落語会に行っても寄席に行っても百栄は新作ばかり。それがやはりこういうところで二席やるとなると、一席は古典をやるのかもしれない。今日の一席目は『お血脈』だよ。なんだかそれこそ何年振りかで百栄の古典を聴いたよ。これがいかにも百栄らしい『お血脈』。なんともほんわかと、とぼけた味わいで、百栄流の脱力ギャグがところどころに入って来る。この人の古典、もっと聴きたくなってきたな。

 仲入り後、春風亭百栄『寿司屋水滸伝』。柳家喬太郎からもらった噺だが、やはり以前、アメリカで寿司屋の職人をやっていただけあって、細かい描写や仕草は百栄の方が本物。寿司屋を継いだ旦那のグズグズ加減も百栄にかかると、ほんとうにしょーもない人間になる。

 桃月庵白酒二席目『宿屋の富』。一文無しの泊り客の法螺話、離れに家を建てたと番頭に言われて三日間歩いたがまだつかないというのは普通の『宿屋の富』。白酒だとまだ続きがある。さらに七日間かかると言われて、旅をしながら俳句を詠んで、それを本にしたらば大評判。思わず宿屋の主人、「それではあなたは松尾芭蕉」。さらに続きがある。翌朝一文無しが出かけようとすると、おかみさんが見送りながら「お客様 今日はどちらに お出かけで」。台詞がすべて五七五になってる。気に入ったら採用してくれという事らしい。「手を振って いってらっしゃい お見送り」。これがやけに可笑しかった。『奥の細道』の続編は『手前の路地』だって。アハハハハ。

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