2012年5月17日第27回白酒ひとり(国立演芸場) 開口一番の前座さんは、柳家さん坊で『真田小僧』。 前座さんには珍しくマクラを振っている。実家が北海道の酪農農家で、家の手伝いをして少年時代を過ごしたという話。牛乳を搾るホルスタインが百頭くらいいたとか。子牛の持ち方の説明から、親牛の表情まで、牛の話たっぷりと面白く話してくれる。で、最後は『ドナドナ』になる。うーん。 「楽しいマクラをやりなさいと言ったんですが・・・」と桃月庵白酒。 金冠日食の話や、鈴本演芸場ラブシート(へえー、そんなのあるんだ)を予約したカップルの男性が仲入りでプロポーズする話とかをマクラに、『花色木綿』。 間抜けな泥棒が空き巣に入ると、家の主が帰って来てしまう。懐からメモを出して読み上げる。「家の人が帰って来てしまった場合は・・・裏から逃げる・・・あっ、この家、裏が無いよ・・・ええっと、そのときは・・・入るときに裏を確かめる・・・これを先に読まなくちゃいけないんだ」 二席目。『花色木綿』は橘家文蔵に教わったということを語ったあと、「二時間くらいある長い噺だったんですが、なんでこんなに短くなっちゃったのかと」。 前回もらったアンケートに答えるコーナー。今の前座気質など。オフレコっぽい話が続く。もっとも一番危ない話は、「質問された方は楽屋にいらしてください」 もとに戻って文蔵の思い出から、古今亭一門は博打好きだという話。そして『笠碁』へ。 一手待つの待たないので喧嘩別れした囲碁友達のところに、仲直りをして、また行きたいと思っている男。白酒は男が、相手の家に煙草入れを忘れてきたという設定を上手く入れている。 家の者に「煙草入れを取りに行く」と無理矢理、理由をつけて、雨の中を出掛けて行く。 一方、相手も仲直りしてまた一緒に碁を打ちたい。「(相手に)煙草入れを届けましょうか?」と家の者に言われて、「余計な事をするんじゃない! 取りに来るかもしれないだろ。それが唯一の望みなんだから」 煙草入れを取りに来た男は、「ヘボの家に置いておくと、煙草入れがヘボになるといけないからな!」って、いいなあ、こういう憎まれ口。 仲入り後に三席目。昔はその近くに集まった人たちの職業が町名になったりしたというマクラ。 ああ、これは馬喰町から『宿屋の富』に入る流れだなと思っていると、もし噺家町という町名があったらという白酒らしい小噺があって、ネタへ入る。 一文無しの男が宿泊先の主人にホラを吹く序盤が笑いの多いところ。自分の土地は広大で10日間歩かないと離れに着かないとホラを吹く。「あんまり遠いんで、道中、文をしたためながら歩いて、それを本にしたら売れちゃってね。『奥の細道』。知ってるかい?」 二番富を当てそこなった男のうどんの件を、あとからうまく回収して行く丁寧な演出もあって、これ、白酒らしい、いい仕上がりだね。 5月18日記 静かなお喋り 5月17日 このコーナーの表紙に戻る |