第421回花形演芸会 2014年6月21日 国立演芸場 開口一番、前座さんは瀧川鯉毛、『桃太郎』。鯉昇一門風の工夫を感じる『桃太郎』。なかなか達者。前座修業頑張ってね。 この花形演芸会は、前座と仲入り後のクイツキの位置にいるゲスト以外はネタ出しをしている。次に上がった春風亭昇々は、『初天神』というネタ出しをしているわけだが、これが前座の演った『桃太郎』と、「生意気な子供の噺」ということで、寄席で言うところのネタがついてしまうというやつ。寄席の世界って難しいね。でもこの昇々の『初天神』、なかなかに工夫がしてある。まず、テンポが緩やか。子供の出てくる噺でこのテンポは珍しいだろう。そして子供の様子を台詞ではなく顔の表情と仕種で見せていく。飴玉の部分も無く、ダンゴのみ。その父親との、買ってくれ、ダメだのやり取りを、じっくり描く。ひょっとして遊雀版を自分なりに変えてみせたのかもしれない。今度はもう少し近くで顔の表情などもしっかり観たいな。 瀧川鯉橋が出て来るなり、「弟弟子がいきなり事故を起こしまして、昇々さんには申し訳ないことをしました」と挨拶。こういう突発事故がまた笑いに繋がるんだから、寄席の世界ってのも、なんでもありなんだね。ネタ出ししてあったように『だくだく』。壁に家財道具の絵を描いてもらう噺。仏壇の絵の下には、コーランと聖書が置いてある。アハハハハ。絵だもんね。なんでもあり。 ストレート松浦のジャグリング。踊る棒をビニール傘でやってみたり、工事用のコーンバーでやってみたり。見せるねぇ。でも、あの長いコーンバー、どうやって持ち運びしているんだろう? 三遊亭王楽は『パパずれてるぅ』。ヒロシくんのおとうさんはオカマさん。ゲイバーを経営している。そのお父さんが授業参観に現れるという噺。ありえねぇ〜って展開だが、これが落語。なんでもありだね。 仲入り後、ゲストは三遊亭遊雀で『風呂敷』。もう今や、古すぎてわからなくなってしまっていることわざをギャグに使っている部分があって、この部分を削ってしまう人もいるが、遊雀はしっかり残している。「女三階に家なし」の元はわかるけれど、「直に冠を被らず」「おでんに靴を履かず」の元は知らないよなぁ。遊雀は常に冷静な高座運び。お客さんとのやり取りを楽しんでいる。お客さんの思わず漏れた言葉を拾って高座に持ち込む。前にかかった『パパずれてるぅ』も『だくだく』も『初天神』も拾ってやる。さすがだよなぁ。それでいて、亭主と女房の意見の違いなんていうものも取り込んで、「話って両方聞いてみないとわからないものだよなぁ」と笑いを取る。完全に高座を自分の物にしているね。 カンカラの時代劇コント。今日は、異人さんとの遭遇編。 トリは珍しく浪曲。菊池まどかで『赤垣源蔵〜名残の徳利』。この人、声がいいなぁ。歌い上げるところで、すっかり聞き惚れてしまう。これで、台詞の部分でもっと心を掴めるようになると最強だね。 6月22日記 静かなお喋り 6月21日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |