直線上に配置

客席放浪記

第428回花形演芸会

2015年1月17日
国立演芸場

 開口一番、前座さんは三遊亭ふう丈『初天神』。前座修業頑張ってね。

 勢いのある二ツ目、桂宮治だが、今日はちょっといつもほどのテンションではないような。『棒鱈』も、宮治ならもっと破壊的な笑いに持って行けるはずなのに、私の期待してる宮治ほどではなかった。もちろんほかの若手の『棒鱈』に比べれば群を抜いて面白いのだけど、もっともっとと期待してしまうのは、こちらの一方的な思いなんだろうか。

 エネルギーのコント。いつものように狂言ネタ。狂言というおそろしくマイナーな題材で、狂言というものを一度も観たことが無い人でも笑わせてしまう。今回は狂言師の写真集を出したいと言うカメラマンと狂言師という設定。いろいろ考えて来るね。でも、そろそろ狂言以外のネタも観てみたいな。

 三遊亭究斗は、劇団四季出身でミュージカル落語をやる。しかし狂言ほどではないにしろミュージカルっていうのもマイナーなんじゃないの? こう思うのは私だけ? 劇団四季のミュージカルは観たことないし、観たいとも思わないし。『お菊の皿』も、劇団四季が演出してお菊が『ありのままの』を歌うという展開に持って行く。場内は大受けだったが、どうもねえ。私は映画『アナと雪の女王』も観てないし、観たいとも思わないのだよ。

 浪曲というのも、その存在自体がマイナーになってしまっている。菊池まどか『村松三太夫』は赤穂義士のひとりの物語。冒頭の薪割りのところで、「あ〜、この人の話か」と思い出した。講談でもやる『義士銘々伝』のひとつだが、この浪士の存在も、なんとなくマイナーというか地味なんだよね。

 仲入り後、ゲストは立川談笑。今日の顔づけはよく考えると゛どうしちゃったの、国立演芸場!?」と言いたくなるのだが、色物は百歩譲るとして、落語が、宮治、究斗、トリが百栄で、ゲストまで変化球で来る談笑。直球派がひとりもいない。まあこっちの方が私好みなんだけどね。噺は超メジャーな『時そば』だけど、談笑だから、まともにやるわけないね。まずい方のそば屋、細いとか太いではなくて、そばがき状になって出てくる。でもまあ私見なのだけど、屋台のそば屋が生麺をその場で茹でていたとは思えないんで、どう考えても、うまいそば屋なんて考えられない。腰があるそばなんていうのはあるはずない。あるとすれば生煮えのそば。今日はなぜかそんなことばかり考えていた。

 U字工事の漫才。いつもの栃木ネタ。栃木ネタっていうのも、ある意味、東京でやるとなると、中途半端にマイナーなんだよね。ロケット団みたいに山形まで行ってしまうと遠い地方の話だけど栃木って案外近いからねぇ。それでも安定した笑い。久し振りに「ごめんね、ごめんねー」も聴くことが出来た。

 トリの春風亭百栄のネタがまた、マイナーときた。三遊亭円生が作ったとされるものを、また円朝が手を入れたという『雨夜の引窓』。『算段の平兵衛』に似ていると言われていて、彦六も『引窓与兵衛』としてやっていたらしい。しかしなぜ今、百栄がこの噺を? 内容は円朝ら、あのころの話によくある人間関係のもつれによる殺人がらみの噺。笑いの要素はほとんど無いが、百栄がやると、あまりに凄惨な描写をサラッとやるから、それが怖さで、思わず笑ってしまったりする。もっともこういう噺を力いっぱいやられると、こっちも疲れてしまうから、この百栄らしい肩の抜き具合が、ちょうどいいのかもしれない。

 今日の花形演芸会は異色な内容だったなぁ。

1月19日記

静かなお喋り 1月17日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置