第五十七回 神奈川華高座 2013年4月20日 横浜西公会堂 二階会議室 一度行きたいと思いながら、なかなか踏ん切りがつかないままになっていた落語会。横浜駅近くの繁華街からさほど離れていない立地条件なのに、ここまで来ると周りは静かな環境にある。公会堂の会議室を落語会用に上手く利用している。お客さんは地元の人らしい高齢者が中心。落語マニアというよりも、一般のお客さんがほとんど。出演者も神奈川に何かしら関係のある人を選んでいる。温かい雰囲気が居心地のいい落語会だった。 開口一番の前座さんは瀧川鯉○。横須賀出身ということでの出演。入門丸二年だが、もうすっかり落語家としての落ち着いた高座ができている。ネタは『松竹梅』。前座修行、頑張ってね。 金原亭馬治も二ツ目になって十年。そろそろ真打といったところ。高校時代を藤沢で過ごしたという事での出演。一席目は『片棒』。吸った息はもったいないから吐かないというケチな旦那。「吐かないと長生きしないよ、儚いと言って」と言われてもケチな性分は直らない。同じくケチな息子からケチに徹した葬式を提案され納得してしまう。「死して屍拾う者なし」なんて弔辞を言われちゃあ、ケチ人生の意味がないやね。 古今亭今輔は、長いこと鶴見に住んでいたことからの出演。一席目は、クイズマニアであることの長いマクラから『雑学刑事』。テレビのクイズ番組って、ようするに雑学。知っていたからといって、ほとんど何の役にも立たない事がほとんど。それでもこの噺の刑事のように、雑学知識で犯人を追いつめる事ができれば、役に立つのかも。刑事ドラマのパロディ。『めしばな刑事タチバナ』のジャンクフード雑学よりも凄い。 仲入り後の、金原亭馬治二席目は『天狗裁き』。どんな夢を見たか言えない男に、これは幕府転覆の陰謀だと奉行に言われちゃあ、かなわない。うーん、落語会でうかうか居眠りもできない。馬治も、もうすっかり真打のような風格が出てきた感じ。今の前座二ツ目はとにかくレベルが高い。うれしいけれど落語界はたいへんなことになってきたなぁ。 古今亭今輔の二席目『ハードボイルドのカリスマ』は、以前から聴きたいと思っていながら、ようやくあたった。北方謙三を思わせる作家がインタビューに答えているのだが、若いころに現実にあったことと創作がごっちゃになっている。そこへ作家の昔を知る知り合いが通りかかったものだから、実際にあったことをバラされてしまう噺。この二重構造が面白い。初恋の人ナオミさんが出てくるのが伏線になっているのも上手い構成。さて、明日の国立演芸場『花形演芸会』でもこの噺をかけるようだが、どういう反応がお客さんからあるから楽しみだ。 4月21日記 静かなお喋り 4月20日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |