はるヲうるひと 2014年4月6日 下北沢 ザ・スズナリ 佐藤二朗主宰のユニット、ちからわざが五年前に上演した芝居の再演。役者もほとんど初演当時のままだそうだ。佐藤二朗と大高洋夫というクセのある役者2人が出るということで、興味を持って観に行った。脚本も佐藤二朗。佐藤二朗は最近、役者だけでなくテレビドラマなどの脚本にも名を連ねている。それがなかなか面白くて、気になる存在。 時代は現代・・・だろう。日本のどこかのある島。その島では売春が行われていて、舞台はその置屋の一室。4人の売春婦(野口かおる、兎本有紀、笹野鈴々音、今藤洋子)が寝起きしている。この売春宿の経営者は先代から店を継いだ哲雄(大高洋夫)と、その弟・得太(佐藤二朗)と妹・いぶき(韓英恵)。哲雄は、父親が妾に産ませた得太といぶきに憎悪を感じている。これに国籍不明の客(太田善也)が絡む。 暗いテーマの話だが、舞台自体は明るい。4人の売春婦も生き生きと、ひとりひとりの個性が生かされている脚本(佐藤二朗)だし、演出(堤泰之)だ。 約2時間の芝居。退屈することなく観られた。後半になってドロドロした話になっていくのだが、ところどころに、ギャグが盛り込まれていて、そんなに気にならない。これも佐藤二朗のユーモア感覚のいいところ。売春婦役でも笹野鈴々音と、へんな客のやり取りがやけに可笑しくて、楽しい。売春をテーマにしても、いやらしさはなく、アッケラカンとしている。 根底に流れるのは、血縁の問題。それに、愛とセックスの関係。売春を始めとして、愛の無いセックスとは? といったこと。それが、3人兄弟(妹)の出生の秘密が明かされることによって、根底から覆ってしまう。それは、ぜひ観て確かめてほしい。 やはり佐藤二朗は役者としても達者だ。 それと大高洋夫も、今回は狂気を孕んだ役どころだったけど凄みがあったなぁ。 韓英恵は鈴木清順の『ピストルオペラ』に10歳でデビューしたという女優。それから、ずいぶんたくさんの映画に出ている。ちょっと陰のある役を演ると上手い。 案外面白かったのが、太田善也という役者さん。おそらく私は初めて観たと思うが、この人、いい味出してる。 かなり重いテーマで、どんどん暗くできそうななものを、サラッと笑いと共に提示してみせる。佐藤二朗、やはり気になる人だ。 4月7日記 静かなお喋り 4月6日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |