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客席放浪記

2012年10月21日ハローダーリン!(三日月座BaseKOM)

 17年ぶりに帰国し、舞台女優を目指して女優復帰宣言した長谷直美の、復帰第一作になる。田中優樹とのふたり芝居。これにキーボード奏者が舞台袖に付く。

 コメディ風のイントロのあと、本筋になる芝居が始まる。

 夫の年金受給手続きにやってくる女。そして、それに対応する年金事務所の職員。話すうちに、女は職員が学生時代に家庭教師をやってくれた女性だということが判明する。しかも、この女性の夫は、職員の兄と結婚するはずだったのに、兄から婚約者を奪って逃げてしまった男。職員は是非とも、この女性の夫に会ってみたいと思い出す。

 話が進むうちに実は、この職員は兄の婚約者という立場のこの女性を愛していた事が判明するという展開になる。こう書くと深刻な話になりそうだが、それでいてあくまでもコメディ・タッチ。しかも進むと同時に、これが徐々にフラック・コメディでもあるのが見えてくる。

 途中のカステラ消失トリックとか、田中優樹の役者物まねとか、あるいは楽屋落ちとか、観る者を飽きさせない作りも楽しく、ブラック・コメディをうまくコントロールしている。

 最後のオチに当たるアイデアも、ついニヤッとしてしまった。上演時間一時間ちょっと。久し振りにコンパクトで、小粋で、楽しくよく出来た芝居を観られたという満足感に浸った。

 生まれ変わった長谷直美。これからが楽しみになってきた。

10月22日記

静かなお喋り 10月21日

静かなお喋り

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