披き・落語〜醸と贅〜昼舞台 2013年3月18日 東京芸術劇場プレイハウス まずは能。能なんて今まで生きてきて何回観たことがあるのやら。ひょっとして実物は初めてかも。時代劇映画で観たことはあるけれど、はっきり言ってよくわからなかった。今日の演目は『高砂』の中の有名な舞の部分。落語『高砂や』で知ってはいたが、その元になる能の舞を初めて目にすることができた。そういう意味ではお得でした。 20分ほど幽玄な世界に浸ったあとは一転して落語。春風亭昇々の『生まれる!』は、早生まれよりも遅生まれの子供を産みたいと思っている女性が、どうも早く産まれてきてしまいそうな子供を巡ってのドタバタ。「へえー」というオチが付いている。おそらくここから噺を組み立てていったのだろうが、面白いなぁ、これ。 三遊亭遊雀『悋気の独楽』。「寄席に行って来るから」と嘘をついてお妾さんのところへ出かけようとする旦那。「こんな寝間着みたいのじゃなくて、いい着物を出しておくれ」と言われておかみさん、「どうせ、向こうに着いたらすぐ寝るんでしょ」 「寄席にいて寝るというのは、あれでいてなかなか勇気がいるんだぞ。こっちから、よーく見えるんだから」 お妾さんは壇蜜似のエロい人。これは通い詰めるわけだよね。 笑福亭三喬はお得意の泥棒噺『月に群雲』。 合言葉にヘンにこだわる盗品買い取り業の旦那と、間抜けな泥棒たちの噺。「月に群雲」と言われて、いちいち勿体付けて煙草に火を付けてから「花に風」と答える旦那が可笑しいのなんの。これ、以前に一回だけ聴いたことがあって、また聴きたいなぁと思っていたから、儲け儲け。誰か東京でも演る人出てこないかなぁ。 柳家喬太郎は東横線のマクラ。私などはほとんど利用したことのない路線の話だし、別に私は鉄っちゃんでもないのだが、喬太郎にかかると、こういう話が途端に面白くなる。東横線かぁ。これからもほとんど縁は無いな。 ネタは『ハンバーグができるまで』。離婚したマモルくんのところに、ほかの相手と再婚が決まったサトミさんが、その報告がてら、ハンバーグを作りにきてくれる噺。ふたりの思い出の味が詰まったハンバーグを食べるマモルくんの心境は、・・・せつないだろうなぁ。思えばサトミさんも残酷だね。 桃月庵白酒もいつものように、寄席や落語界を茶化してみせつつ『松曳き』へ。似た言葉遊びも健在。「ざっくばらんに申し上げますと」に「なにが、ザック・ジャパンだ!」 トリが春風亭昇太。自分と志の輔が同期であることを比較して笑わせ、自分は薄っぺらに見えるだろうけれど、自分がいかに気楽で幸せかをやや強引にアッピールした流れで、今度は『ちい散歩』の地井武男と、『ゆうゆう散歩』の加山雄三を比較してみせる。結局、どちらがいいとかわるいとかじゃなくて、ひとそれぞれだということと、テレビという媒体は異様な人ばかり出ているんだという流れへ。こういうところは、むしろ志の輔風のマクラだよなぁ。相撲のことにちょっと触れてから「どんなに頑張っても力が出ない。そんな日があるんだと思って、私の噺を聴いて下さい」と『花筏』。 志の輔だったらこの噺どうやるんだろうと思いながら聴いていたら、案外、提灯屋さんのうろたえ方とか共通のところがありそうだなと思った。まあ、志の輔の方が深刻に考えちゃう提灯屋さんになっちゃうだろうけどね。 3月19日記 静かなお喋り 3月18日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |