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客席放浪記

2012年3月10日春風亭一之輔独演会(横浜にぎわい座)

 開口一番前座さんは、春風亭朝呂久『のめる』。頑張ってね。秋には二ツ目とか。一之輔の弟弟子。一之輔が朝左久の名前だった前座時代も、小憎らしいほど「上手い」と思ったが、この朝呂久もまた上手い。一朝門下は目が離せない。

 春風亭一之輔、一席目。高座に上がると、満席の場内を見まわして、「いつもは、この建物の地下の、野毛シャーレという多目的ホールで演っているんですが」と感慨深い様子。「多目的ホールという暗い空間なんです。集団リンチしたり・・・。血の痕が残っている」 実際、プロレスに使われたりもしているから、冗談でなく、そんなこともあるかも。
 真打披露パーティも終わり、いよいよ今月下席から真打披露興業が始まる。21人抜きの単独真打昇進。いろいろな意味でたいへんだろう。
 素人に落語を教える教室へ講師に行ったというマクラから『あくび指南』。これはもう一之輔の十八番ともなっている最強ともいえるネタ。今回も可笑しくて可笑しくて、ゲラゲラ笑ってしまう。また工夫が加わったようだ。

 柳家三三『妾馬』。以前『落語家Xの快楽』で、この『妾馬』の序ともいうべき、あまり人が演らない部分を聴いて、その面白さに驚いたことがあるが、今回のは、そのあとの部分まで行く。お殿様に見染められて屋敷に上がった妹お鶴が妊娠したというので、お屋敷に兄の八五郎が行く噺。「(身分の差を)飛び越えて殿様と一緒になったのだから・・・、いいかい、人を飛び越え(て真打になっ)たんだから、気をつけなきゃいけないよ」と、三三なりの一之輔へのエールも入る。これもおめでたい噺で座を盛り上げる。

 仲入り後出てきた春風亭一之輔、いきなり「お鶴でございます」に大受け。「そろそろ身を固めてみたらどうかい?」「セメントで?」「やるかい?」 こんな感じで始まった『不動防』は、一之輔らしい、スットンキョウなキャラクターの人物ばかりが出て来て可笑しいのなんのって。後半のチンドン屋、へたくそな落語家らが出てくると、もうドタバタ喜劇の世界に突入してしまう。

 『あくび指南』のような、軽くて確実に笑いが取れる十八番を持っていて、『不動防』のような大きなネタも安定した自分の世界に持って来てしまう。もう真打は当然のことのような気がする。

3月11日記

静かなお喋り 3月10日

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