第3回コラアゲンはいごうまん、春風亭一之輔二人会 2014年11月18日 横浜にぎわい座 まずは春風亭一之輔の『堀の内』。落語に出てくるそそっかしい人間は度外れていて、社会生活もやっていかれないだろうとのマクラから、まさにとんでもないそそっかしい男の噺にしている。南妙法蓮華経の題目を唱えながら堀の内まで向かうのだが、そのお教がほとんどラップになっちゃってる。すごいね。サゲの銭湯だって息子の名前が、金坊から亀になりジョンになりポールになりジョージになりリンゴになってしまう。息子の背中と間違えて壁洗うなんていうところも、それをさらに飛躍させて目の前の鏡を洗い、その鏡のネジを外して持って行っちゃう。こういうのは勢いでやる落語だということを、よく知っているんだね。 体験ルポ漫談のコラアゲンはいごうまんは最近出来たネタだそうだ。題して『謝罪会見異常あり』。今年になってあった謝罪会見ベスト3として、佐村河内守、逃走した岩谷議員、そして野々村議員号泣会見をあげ、そのことを漫談として語る。特に野々村議員の号泣シーンは、きちんとそっくり言葉も再現してみせる徹底ぶり。そしてここで話は次の展開になる。どこからも批判が来ないような謝罪会見というのはどうしたらいいのだろうか。調べてみると世の中には危機管理コンサルタントといった会社が存在し、そこに行くと完璧な謝罪会見のレクチャーと、その会社、人用の想定質問、それに対する対応をリハーサルさせてくれるらしい。そこで、そんな会社のひとつに行き、頼み込んで特別に謝罪の方法を聞いてきたというルポ。この会社のスタッフはほとんど元マスコミの記者。つまりさんざん会見で嫌味な質問を浴びせていた人たち。質問をされる人にグサグサ刺さるようなことを言う。つまりあの号泣議員は、まんまんと記者の言葉、挑発に乗ってしまって、あのような精神状態に追い込まれてしまったというのが、見事にわかる。あの号泣会見は質問者の質問部分がカットされているから、なぜ野々村議員があんなことになってしまったのかわからない。でもきっと酷いことを言ったんだろうなぁ。これは凄い体験ルポになっていた。最初、このネタは30分程度のものだろうと思ってたら、今回も一時間を超える大作。いままでのネタはとても放送できないものばかりだったし人によっては引いてしまうものだったけど、これは万人受けできるものになっているんじゃないかなぁ。 このコラアゲンはいごうまんの熱演のあと、一之輔はやりにくいだろうと思わせておいて、トリの『富久』のできはよかった。幇間の久蔵は本当にダメなやつで、意地汚くて、自分勝手なやつに描かれている。酒が大好きで、酒で失敗ばかりしているって、もう幇間として問題ありで、一番幇間に向いてない人間。しくじった旦那の火事見舞いに駆けつけて、出入りをまた許してもらった途端に、見舞いで届いた酒を飲み出して酔って酒癖の悪いところが出る。なんと号泣会見を始めてしまう(笑)。このへんが一之輔の上手さであり器用なとこだね。嫌な性格の久蔵を演じながらも、酒が好きで好きでやめられなくて、ついつい隣に置いてある燗つきの酒の存在が気になってしまうところが可愛らしく表現されていて、これも楽しい。 浅草から芝まで、寒い中、旦那のところへ駆けつける久蔵。浅草から芝まで火の見やぐらを登れば見渡せたというのも、昔は高い建物が無かったということを思わせて、「ほお」となるが、実際、浅草から芝までだと歩いたって二時間くらいかかる。それを寒い中、走って駆け付けたんだから旦那の赦しも当然出たろうと感じる。最近どこに行くにも歩いている私には、この距離感がよくわかる。以前よりこういう噺は面白く感じるようになった。 11月19日記 静かなお喋り 11月18日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |