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客席放浪記

一之輔のすすめ、レレレ〜vol.10

2015年9月15日
なかのZero 小ホール

 柳亭市弥は、そろそろ二ツ目になって三年になろうとしている。二ツ目になるときに、市也から市弥に改名したのだが、主催者の用意したメクリが市也のままになっていたということで、メクリなしで高座に上がった。主催者のうっかりしたミスとはいえ、名前って重要。でもこれだけたくさんの落語家がいる時代になって、名前がよく変わると、当然、ミスって多くなるよなぁ。
 『湯屋番』の若旦那、なかなか育ちの良さを織り込んだ演じ方がいいね。
 「外回りっていうと、各地の温泉を渡り歩いて、最後は湯布院へ行くと、柳亭市馬落語会、いや柳亭市馬歌謡リサイタルをやってたりして・・・」。

 春風亭一之輔、女装をさせられて人からカワイイと言われたそうだ。女装する人や、しいては女性の気持ちがわかったりとかいうの、面白い。
 それと寄席の楽屋の噺。林家ペーのこと、女性の芸人が増えて自分の方が着替えが恥ずかしくなったりといったマクラ。
 仲入り前の二席は『加賀の千代』『普段の袴』。この二席に出てくる男を並べて聴くと面白い。
 『加賀の千代』は、隠居さんのところに訪ねてきた男を隠居さんが、とても好いている。真っ正直すぎて、ときに言わなくていいことまでズケズケ言ってしまう。そんな男を隠居さんが面白がっている様子が垣間見える。
 一方で『普段の袴』。大家さんのところにやってきた男は、ほとんどぶっ飛んでいる男。大家さんがこの男と関わるのを嫌がっているのがわかる。
 どちらの噺も、一之輔らしいデフォルメがほどこされていて、知っている噺なのに、次に一之輔が何を言いだすのか楽しくて仕方ない。

 仲入り後のヒザは林家二楽の紙切り。鋏試しのあと、お客さんからのお題は、招き猫、林家ペー、オコエ。それに紙切りストーリー『明日があるさ』。

 一之輔トリは『らくだ』。私はこの噺が始まると大抵、ちょっと重たい気分になる。「あ〜、『らくだ』かぁ」という感じ。聴いていて嫌いな噺というわけではないのだけれど、らくだの兄貴分を本当にドスの利いたヤクザにしてしまうとリアリティは出るのかもしれないが落語としての面白さではなくなってしまうような気がするのだ。やはり落語の『らくだ』の兄貴分は、どこか落語世界の人物であってほしい。一之輔の兄貴分は、その加減が丁度いい。
 酔っぱらった屑屋が、泣き上戸、笑い上戸、怒り上戸と変化して行くメリハリもいい。
 火葬場までやらずに屑屋と兄貴分の力関係が逆転したところでサゲた。
 屑屋が屑屋をやる前に、いろんな仕事をやって、どれも続かず今は屑屋をやっているという設定は初めて聴いた。そのへんをもっと掘り下げると面白いような気がするが、この程度でサラッと入れるのがまた一之輔らしくていいのかもしれない。

9月16日記

静かなお喋り 9月15日

静かなお喋り

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