池袋演芸場三月下席昼の部 落語協会 新作台本まつり 2013年3月22日 開口一番は、古今亭きょう介で『不精床』。前座修業頑張ってね。 ここからは新作落語ばかりが続く。三遊亭亜郎は『トイレ革命』。公衆トイレが汚いと言われ、自治体がまるでファーストフード・シッョプのようなトイレを作る噺。これ、去年も鈴本で聴いたけれど、それ以来、きれいな公衆トイレに入るたびに、この噺を思い出すようになってしまった。 川柳つくしは『十低の男』。女性にとっての理想の結婚相手は三高(高学歴・高収入・高身長)という時代から、今は三低(低姿勢・低依存・低リスク)なんだそうだが、この噺のアラフォー女性は、三低はもちろん、低学歴、低収入、低身長、さらには鼻が低くて、志が低くて、血圧が低いなんていう男性を探している。その理由がいちいちもっともだと思わせるもので、男性、諦めちゃいけませんな。アハハハハ。 古典しか演らないと思っていた桃月庵白酒の噺は、果たしてどこから出てきたネタなんだろう。聴いたことが無い。ヨシオくんの三者面談。おかあさんと担任の先生とで将来の進路相談をしていると、ヨシオくんが「くノ一になりたい」と言いだす。仰天した先生に校長先生まで加わってのやりとりが、やがてとんでもない噺に発展していく。誰が作ったんだ、これ。 とんぼ・まさみの漫才。上方から来たコンビで、ゆる〜いトークが気持ちよく続いていく。まさみが「エグザイルのあつしに似るから」と言われて買ったというサングラスをしてみせると、「金正男でしょ、これ」 ウハハハハ、似てる。後半はピザの宅配のネタ。 夢月亭清麿は『時の過ぎゆくままに』。ハードボイルトを気取った男が横浜のバーのカウンターでバーボンのオン・ザ・ロックを飲みながら、近くの席の女性を口説こうと機会を狙っている噺。昔っから演っているネタで、久し振りに聴いたなぁ。こういうドキュメント風に積み重ねていく新作落語の作り方って、実験落語会で流行ったんだよね。 柳家喬太郎の『あの頃のエース』を初めて聴くことができたのも、今日の収穫。三題噺から生まれたネタとして、存在は聞いていたけれど、ようやく出会えた。ウルトラマン・シリーズのフィギュアを飾っている中小企業の社長さん。ところがなぜかウルトラマンエースだけが並んでいない。そんなある日、彼の幼馴染でもある女性が経営する弁当屋との合併話が持ち上がる。喬太郎らしい、ほろ苦い結末を迎えるこの噺、いいなぁ。ウルトラマンエースがどう絡んでくるのかが、この噺のミソ。ウルトラマン世代の人には、私なんかよりもっと思い入れがあるかも。 仲入り後は、ホストクラブのホストを主人公にした連作でお馴染みの、三遊亭ぬう生。今日は『選挙ホスト』。ホストが参議院議員選挙に立候補する噺。マクラと序盤で風営法の客引き行為の話を振っていたのが、最後への伏線だったとは思わなかった。なるほどー。うまいね。 柳家小ゑんは『ミステリーな午後』。これも以前に聴いたことがある。いつもホカ弁しか買わない中年サラリーマンが、寿司屋が下げ忘れた出前の寿司桶を見つけて、持ち帰り寿司を買ってきて並べて、さも寿司屋から取ったように見せかける噺。東海林さだおが漫画にしそうなネタだなぁ。ちょっとしたサラリーマンの悲哀だね。 マギー隆司のマジックは、例によって喋りまくって、うまくマジシャンズチョイスに持っていくカード当て。お客さんが裏をかこうとしたけど、うまく逃げられた感じ。このへんもさすが。 トリの林家彦いちが『恐怖のタクシー』。世の中には悪気はないのだけど、ちょっと困ったちゃんという人がいる。そんな部下を持った会社員が横浜からの帰りにタクシーで東京へ戻ろうとすると、そのタクシーの運転手が・・・という噺で、そういう人を怒らせると怖いよというオハナシ。カリカチュアしているが、現実にそんな人がいるし、どういう行動に走るかわからないのが現代。なんだか時代の空気を描き出しているような気がする。 3月23日記 静かなお喋り 3月22日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |