直線上に配置

客席放浪記

池袋演芸場六月中席夜の部

2013年6月12日

 開口一番前座さんは瀧川鯉○『かぼちゃ屋』。前座修業頑張ってね。

 三笑亭朝夢『皿屋敷』。お菊さんの幽霊が人気を呼び、お菊さんグッズが発売される。お菊さんマカロンも売られている。これ可愛くていいな。思わず買いたくなってしまった。

 Wモアモアの漫才は、取り留めのない話題が続いていくのが気持ちいい。気負わない、肩から力が抜けた感じ。この日116歳で無くなったと報道された、木村次郎右衛門さんの話題をさっそく持ってきて、そこから少子化、飛ぶボールと、時事ネタを繋げていく。聴く方は本人たちのいうところの“立ち話”に身をゆだねて時を過ごす。いいんだなぁ、これが。

 「この着物、おろしたてなの。夏物。高そうでしょ。まあ500万円くらいね。カバンもね、ブランドもん。豚の革だよ。美トンね」 軽やかにポンポンとマクラを振っていく雷門助六。昭和22年生まれというから今年緑寿。軽妙な語り口がいいんだなぁ。ネタは『相撲風景』

 夢丸新江戸噺などでキッチリとした噺を聴かせてくれる三笑亭夢丸。今日は弟子の真打昇進披露興行でもあるからか、噺に入らず漫談。中咽頭癌で命を落としそうになった経験からか、生死感を感じさせる辞世の句の話。円朝門下の三遊亭一朝の辞世の句「あの世にも 粋な年増は いるかしら」と、今年亡くなった市川団十郎の「色は空 空は色との 時なき世へ」を紹介。色即是空、空即是色。そういった心境に到達した歌舞伎役者も凄いが、死んでも楽しい来世を夢想した落語家も凄い。私などフワフワと生きてきて、死ぬ時もまたフワフワと死んでいきたい。どちらかというと落語家的心境で死にたいな。

 そんな事を考えたあとは、北見マキのマジック。ロープを切ったり繋げたりのマジック。そしてお客さんに両手の指を縛ってもらって、マイクスタンドや輪っかに腕を通すマジック。お客さんに縛ってもらうときのトリックなんだろうけど、わかんないんだよなぁ。

 桂米助は、毎年観戦に行っているアメリカ・メジャーリーグの事を語る漫談『メジャーリーグ』。こういう噺は、この人しかできない。

 三遊亭小遊三『持参金』。この噺がいつごろ出来たものかは知らないが、普通五円とか十円という設定で演られている。小遊三は10万円。ははぁ、これが今の感覚だとするとわかりやすい。相手の女性はイイダコ・テンコ。略してE.T.

 仲入りがあって、いよいよ真打昇進披露口上。中央に花助改メ雷門小助六、春風亭笑好、月夢改メ三笑亭世楽が座り、それぞれの師匠である雷門助六、春風亭小柳枝、三笑亭夢丸がその脇に座る。それに落語芸術協会副会長の三遊亭小遊三。司会は桂米助。冗談なのか本気なのか、寄席の披露口上はいつも楽しい。基本、昇進する弟子を持った師匠よりも自由な事が言える立場の者や、司会者が混ぜっ返す事が多いが、師匠連も負けてない。それらが時に台本通りだったりアドリブだったり、そこは見えにくいのだが、これが楽しいんだなぁ。今日は司会の米助が混ぜっ返し役。

 雷門小助六は珍しいネタをたくさん持っている人だから、はて、何で来るだろうと思っていたら、あれ、『辰巳の辻占』。これはよくかける人もいるが、へえー、真打披露興行でこれを持ってくるとはねぇ。客と深川女郎の騙し合いみたいな粋な噺で私も大好き。小助六、真打になってもこの噺のような調子で、飄々と高座を務めていくんだろうなぁ。師匠の助六と似た口調や芸風なのもいいなぁ。

 春風亭笑好『湯屋番』。こういう一人気ちがいみたいな噺を演るのは勇気がいる事で、うまくハマれば客席は沸くが、失敗するとシラーっとしてしまう。今日はお客さんも温かくて笑いが起こり、笑好もやりやすそう。

 笑好のあとを受けて、師匠の春風亭小柳枝が高座に上がる。「毎年六月十日ごろに梅雨入りして、七月十日ごろに雷が鳴って梅雨が明けますが・・・」と時候のマクラを振りながら、スーっと『青菜』へ入っていく。この自然な流れが気持ちいいんだなぁ。そうか、もう『青菜』が寄席にかかる季節になってきたんだなぁ。寄席で季節を知る。これぞ粋ってもの。

 ヒザがマグナム小林のバイオリン漫談。ヒザが音曲というのは一番いいんじゃないかと私は思うので、この選択はいいなぁ。

 今日のトリは三笑亭世楽『三方一両損』をキッチリと。

 真打昇進披露興行は、新真打の身内の人もお客さんに多数混じっていて、いつもと違った雰囲気になる。どこかウキウキと浮き立っている。これが好きなんだなぁ。

6月15日記

静かなお喋り 6月12日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置