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客席放浪記

落語芸術協会真打昇進披露興行

2014年6月19日
池袋演芸場

 開口一番前座さんは、桂たか治『天失気』。今の前座さんはいきなり上手な人多いね。前座修業頑張ってね。

 桂宮治の勢いは相変わらずだね。ブンブン飛ばしている。友人のタクシードライバーが体験したという怪談噺をしてみせ、「実はこれは私の作り話でした」と、『弥次郎』の序盤だけやって引っ込んでしまった。なんか高座を駆け抜けて行ったって感じね。

 ナイツが、先日のAKB48の握手会でのノコギリ男の話を、さっそくネタにしている。「すぐに取り押さえられたそうでよかったですね。AKBだけに、えーけいびがいてよかった」「刺されたのがお腹でなくてよかったですね。サシハラ」

 春風亭柳橋『小言念仏』。すごいね、この真打披露興行のネタ帖。オナラの噺に、嘘つきの噺に、お教の噺だよ。

 神田陽子は大サービス。なんと三くさり! 『徂徠豆腐』『玄宗皇帝と楊貴妃』『お富与三郎』。しかもぜ〜んぶ三分ずつ(笑)。

 鏡味味千代の太神楽。落語芸術協会の太神楽はピンでやる人が多いね。

 今年、池袋演芸場で瀧川鯉朝がトリを取った時に持ち込んだ、見台と膝隠し。どうやら鶴光ら、上方落語を演る一門には重宝されているようだ。「今度、この見台をNHKが取材に来るそうです。クローズ・アップ・けんだい」と、笑福亭鶴光は今日も見台膝隠しで『荒大名の茶の湯』

 三遊亭小遊三『鰻の幇間』。テンポよく、騙された幇間がそれほど悔しがっていないのがお気楽ムード。「この、中に青い渦巻の模様が入っているおちょこ。昔、養老乃瀧が使ってたやつだろ!」 最近、養老乃瀧あんまり見かけないね。

 口上は、新真打、柳家小蝠、神田京子、そしてべん橋改〆春風亭柏枝。それに、春風亭柳橋、神田陽子、桂伸治、笑福亭鶴光、三遊亭小遊三と、にぎやか。
 本来、小蝠の師匠、蝠丸が上がるところだが、体調を壊しているとのことで、弟弟子の伸治が代理。それにしても今回の三人、最初の師匠が三人とももう亡くなっていて、預かり弟子というのは奇遇。
 中でも、小蝠は、最初立川談志門下に入り、上納金不払いで破門になり、桂文治門下、そして文治が亡くなり、蝠丸門下。「その師匠も肺がん末期で死にそうだ」と言われて、周りから、「大丈夫、大丈夫」。「談志門下の時代から勘定すると、実に真打になるまでに20年。一歩一歩前に、こふく前進」

 さんざんな言われような柳家小蝠だったが、高座に上がるや、「うちの師匠、確かに身長173cm、体重43,5kgですが、肺がん末期患者じゃありません。末期がん患者のように見えるです」。短い持ち時間で『青菜』をスピーディに。

 べん橋改〆春風亭柏枝。師匠である八代目柳橋も、べん橋→柏枝→柳橋となった。七代目柳橋も、柏枝→柳橋になったわけで、由緒ある、将来を期待される名前だ。七代目が亡くなったのが、10年前。まだ柳橋と言うと、人によって七代目と八代目、どっちの話をしてるかわからない。それで、七代目を、もう死んじゃった師匠。八代目を、まだ生きてる師匠と使い分けているとか。噺は『ろくろ首』

 桂伸治は、もう時間が押してるなあと思ったが『棒鱈』に入った。途中で切るのかと思ったら、最後まで。

 ボンボンブラザースの曲芸は時間調節かと思ったけれど、これもしっかり。

 トリの新真打、神田京子。滑舌よし、愛嬌よし、ユーモア感覚も人一倍。それに何より華がある。張り扇の叩き方をお客さんと一緒にやって一体感を作り上げ、『赤穂義士伝〜南部坂雪の別れ〜』へ持ち込む巧みさ。連判状に記された四十七士の名前をスラスラと空で読み上げる見せ場で拍手を呼びる。最後は立ち上がって、かっぽれ。まさに晴れ舞台でございました。

6月20日記

静かなお喋り 6月19日

静かなお喋り

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