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客席放浪記

池袋演芸場九月上席

2014年9月5日

 朝早くに目が覚めてしまい、思い切って起きてしまったら、昼食後に眠くなってしまった。たっぷり睡眠をとって池袋演芸場へ向かう。昼の部も、もう仲入りが過ぎているみたいだが、夜の部の仲入りまで観て出てくるというのも悪くないな。

 新山ひでや・やすこの漫才が終るところで入場。

 よかった、雷門小助六の高座に間に合った。演じ手の少ない珍しい噺をけっこう持っている人で、先月浅草で聴いた『宮戸川』もよかったんだけど、やはりこの人には珍しい噺を期待してしまう。と、今日は『武助馬』と来た。これはなかなか遭遇しない噺。武助が歌舞伎役者になろうと、次々と師匠を変えて新しい名前を貰うくだりも楽しい。そして何と言っても後半の馬の脚のドタバタは、なんかコントを見ているみたいな愉しさだ。

 釈台が出されたので、「おや?」と思った。古今亭寿助の出番なのだが、足の具合でも悪いんだろうか? と、出てきて「これから上方噺をやりますんで釈台を出してもらいました。このように小拍子も買ってきました。1520円」。『小倉船』は上方では今でもよく演じられているらしいが、東京では先代の円歌以来なんだそうだ。もっとも寿輔流に、かなり手を入れているとのこと。ようするに海底に下りてからが、もう『魚根問』を思わせる駄洒落がドーッと飛び出してくるという趣向なのだが、それがいかにも寿輔らしい。

 マジック・ジェミーのマジック。芸協の手品はこのマジック・ジェミーと瞳ナナのアイドル・マジシャンがいることでグッと魅力ある色物興行になっていると思う。フローティング・テーブルをお客さんを高座に上がらせて体験させるとかって、上手い演出だよね。

 昼の部のトリが雷門助六。「長くは演りません。ほんの三時間ほど・・・」と始まった噺は、「ああ、『ずっこけ』だね」と思って聴いていたら、噺が何やらおかしな方に進みだした。あっ、これは私はまだ聴いた事の無かった『両国八景』ではないか。驚いたのはそれだけではない。高座には座布団の横に最初っから湯呑みが置かれていたのだが、まったく手を触れようとしなかった。これが噺のクライマックスで小道具として使われた時には息を飲んだ。そうか、そういう手もあったんだ。あの湯呑み茶碗は、ハナから液体など入っちゃいなかった! う〜ん、やられたなぁ〜。
 立ち上がって、操り人形踊り『かっぽれ』。

 夜の部へ突入。開口一番前座さんは、桂伸力『金明竹』。前座修業頑張ってね。

 春雨や風子が、前に『金明竹』が出たからと、ネタがついてはいけないと確認。そうかぁ、これを演る前座さん多いけど、そのあとの人は与太郎の出てくる噺はできないんだね。ほう、『鷺とり』だ。これは、あまりつく噺って少なそう。腰に結わえ付けた鷺、いろんなのがいるね。オレオレ鷺とか、ありゃ、高岡早紀まで。

 マグナム小林のヴァイオリン漫談。タップ踏みながらヴァイオリンを弾く。今日は『天然の美』や『東京音頭』も。

 「スーパーのレジ袋、5円取るところがある。私悔しいから、そういうときは300円のエコハッグ買うことにしてます。そしたら今や家にエコバッグが段ボールに二箱」。笑福亭里光『始末の極意』。こういう上方ネタも、東京で聴けるのはうれしい。

 古今亭今輔『雑学刑事』を寄席の高座で試している。なかなかいい反応がある。これ、寄席でも行けるんじゃないかな。

 チャーリー・カンパニーはいつもの、ねじり鉢巻きにニッカボッカスタイルのコント。今回は交通違反取締の警官。警官轢居ちゃいけないよな(笑)。

 圓馬の代演が、三笑亭可龍。この人の『宗論』は去年も聴いているな。『富士山』になっちゃうやつね。どうやらすっかり得意ネタにしているようだ。

 三遊亭遊雀は、ぜひこの人で聴きたいと思っていた『野ざらし』だ。ようやく出会えたって感じ。以前、この噺を演ることの怖さというのを、ご本人から聴いたことがあって、この手のひとりきちがいの噺というのは、お客さんがクスッとも笑ってくれないと、演っていて落ち込んでくるらしい。おそらく今日のお客さんは大丈夫と踏んだに違いない。長屋の隣の浪人のところに女がやってきたのを覗いた八五郎が、問いただすと、あれは幽霊だと告げられる。そんなことでひるむ八五郎ではない。「世の中にだって化物みたいな女、たくさんいるでしょ」と、釣竿をひったくるようにして出かけてしまう。この八五郎の目が行っちゃってる顔がいい。そして遊雀の八五郎はかなり攻撃的な性格。確かにこういう人間に関わりたくないと釣り人たちが敬遠するのも無理ないね。

 仲入りに入ったところで退出。こうすると、早く家に帰れるからいいね。それでいて満足感はあるし。

9月6日記

静かなお喋り 9月5日

静かなお喋り

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