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客席放浪記

池袋演芸場三月下席昼の部

2015年3月27日

 池袋演芸場三月下席昼の部は恒例の新作まつり。平日の昼間だというのに、お客さんがよく入っている。

 開口一番、前座さんは柳家花どん『金明竹』。傘を省略して猫から。前座修業頑張ってね。

 血液型によって性格が分けられるって、信じていいのかどうなのか議論が分かれるところだが、私と同じく、もっとも少ないAB型の三遊亭丈二を見ていると、ははぉ〜、確かに仲間かも知れないと思えてくるのだから不思議。AB型人間の嫌いなオトウサンが出てくる『1パーミルの恋人』。もう何回も聴いているけど、楽しい。なんとなく自分のこと言われているみたい。

 夢月亭清麿『東急駅長会議』。東急線ってほとんど利用したことが無いのだけれど、この沿線に住んでいる人にとっては、たまらなく可笑しいんだろうなぁ。それでも、大学が無くなってしまっても駅名だけ残っている都立大学に学芸大学。二子新地の駅名の悲劇。祐天寺の怒り。へえーっ、そうなんだと思う。擬人化の手法が多い新作落語でも、これはうまく擬人化を避けながら同じ効果を狙った噺。好きだなぁ。

 三遊亭吉窓『下戸の酒』は、下戸の旦那がこれでは商売相手にお付き合いができないと酒の飲み方を教わる噺。なんともたわいない落語なのだが、吉窓という人は落語のリズムをよくわかっている人で気持ちよく聴かせるね。

 ホンキートンクの漫才。若いコンビということもあるのだけど、寄席の漫才としては少々けたたましいかな? 客層が年配者が多いから、もう少しテンポを落としてジワジワと笑わせる方が得だと思うなぁ。ちなみに私はとても楽しめましたよ。

 林家きく麿『スナックヒヤシンス』の可笑しさというのは何なんだろう? 年増女ふたりとアラサー女が切り盛りするスナック。閑古鳥が鳴いている夜に客の悪口。挿入歌(笑)の『恋の坂道発進』が、なんだかやたら面白くて耳に付く。きく麿、このナンセンスさ、いいねぇ。

 柳家はん治かここに出るということは、今日は『鯛』か『君よ、モーツァルトを聴け』のどちらかだなと思ったら、今日は後者の方だった。クラシック好きの大家さんからモーツァルトと『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』を教えてもらった男が、余所で受け売りをして失敗すると言う落語の黄金パターン。私は先日モーツァルトを聴きに行ったばかり。いろいろ勉強にもなりました。

 鈴々舎馬るこ『新・一目上がり』。ジブリ作品の好きな大家の家に行った男。『もののけ姫』のセル画に感激して、いい絵ですねと褒めると、「これはいいサンだ」。そう、もののけ姫の名前はサンっていうんだよね。わかる人だけわかればいいんだけど、そのあとの長淵剛とあいだみつお問題とか、けっこうヤバクて面白い。キャハハハハ。

 柳家小ゑん『長い夜』。コーヒー・ショップ談議のギャルたち。居酒屋チェーンのサラリーマンたち。ゴールデン街の演劇青年。青山のバーのギザな男。渋谷センター街でラップを歌う若者。初演版から大分変化を遂げた現代版。時代に応じて変わっていく『長い夜』。これからも変化が期待されそう。

 ダーク広和のマジック。どんどん増えてしまうトランブカードマジックが面白かった。

 トリは桃月庵白酒『うちに来ないで』。幽霊に取りつかれた男の噺。出てきた相手も、殺したと思った相手も幽霊の勘違いだったというオチだが、これは笑える。白酒は持ち前のからかい精神で幽霊とその関係者を笑ってみせる。怪談とは程遠いオチャラケた世界。怖がりの主人公の名前が稲川というのだから笑えるね。

3月28日記

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