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客席放浪記

池袋演芸場十月中席夜の部

2016年10月20日

 開口一番の前座さんは古今亭今いち『初天神』。以前から声が大きくて、聴きやすい人だと思っていた。オリジナルらしきギャグも入る。前座は余計なことをしないで教わった通りにやれという人もいるが、年中聴かされる客の身にもなって欲しい。今いち、いいね。前座修業頑張ってね。

 昔々亭喜太郎は、トリの今輔と同じ東海大オチケン出身。先輩後輩になる。三遊亭円丈主宰の会でやって、円丈から「リアリティがない」と言われたという新作落語。寄席の楽屋にテロリストが現れ、「酒を持ってこい」、「女を呼んで来い」と前座を脅す。「芸恊の女性落語家は、訳あって遅くに弟子入りした三十代から四十代ばかりです〜」。アハハハハ。「『たこ焼き屋ケンちゃん出世』の序でございます」だって。

 紙切りの林家花。お題は「くりごはん」、「イチロー」。紙切り芸人では唯一の女性。女性らしい仕上がりのきれいな紙切り。

 神田鯉栄の講談は、二ツ目きらりの頃から、切れがいい。本日は『義士銘々伝 赤垣源蔵 徳利の別れ』。これから年末までは講談は、忠臣蔵の演目が増えるんだろうな。

 瀧川鯉朝がマクラで、落語家は高座で羽織を脱ぐものだと思っている人がいるようだが、別に脱がなきゃいけないというわけではないと説明してくれた。「先代の文治師匠は、羽織を脱がなかったですね。これが正装なんだからと言って。でも一説によると、次の出番の人が楽屋入りしてなかったときがあって、高座で羽織を脱いで、楽屋に向かって投げておいたら盗まれたことがあって、それから脱がなくなったらしい」。ウハハハハ、これは可笑しい。噺は『夜のてんやもの』

 マジック・ジェミーのマジック。マジシャンズ・チョイス三つ(四つだな)の複合型トランプ当て。それとコツプに入れた水が氷に変わるマジックと、そのタネ明かし。

 三遊亭遊之介は、ゆったりした『置泥』で、とぼけた味。

 昔々亭桃太郎、「今度ラジオでやらなくちゃいけないんで、稽古させてください」と『春雨宿』。宿でお酌されて飲むうちに、「♪酒は大関心意気」「♪喜びの酒 松竹梅」「♪やっぱり俺は 菊正宗」と清酒のCMソングを歌いまくる。高座で歌いたいだけなんだろうね。「こんなのラジオで使えるのかな?」

 仲入り後のクイツキは、コント青年団。出所したばかりのヤクザと、工事現場でガードマンのアルバイトをしているアニキのコント。「最近は白い粉を扱っているんだ」「アニキ、そんなものをシノギにしちゃいけませんよ」「洗濯石鹸だよ。新聞勧誘に持っていくんだ」「シャブじゃないんですか」「ザブだよ・・・ほら、古すぎてお客さんわからない」

 「毎晩6時半にはご飯を食べる健康的な食生活をしているんで、今の時間お腹すいちっゃてて、このあとどなたか、ビールに餃子でも食べに連れてってくれませんか?」。柳亭芝楽『河豚鍋』。もう一気に冬の噺だね。

 「私の着ている着物はテトロン。貧乏くさいでしょ。このあとやる私の落語は、もっと貧乏くさい」。古今亭寿輔は、いつものキンキラキンの着物ではなく、今日はこちらのバージョン。噺は先代今輔の『妻の酒』。毎晩酔って帰って妻から怒られている亭主が、一升瓶を貰って帰って、妻にも飲ませるという噺。なるほど昭和を感じさせて、どことなく貧乏くさい噺かな。

 ボンボンブラザースの曲芸。ひげじろうさん、今日は客席が空いているからか、鼻に長い紙を立てて、客席一周。

 トリの古今亭今輔は、クイズ番組のマクラをたっぶりやって『雑学刑事(デカ)』。すっかり鉄板のネタになったね。

10月21日記

静かなお喋り 10月20日

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