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客席放浪記

2012年4月4日 むかし家今松独演会(国立演芸場)

 開口一番の前座さんは立川笑二『子ほめ』。頑張ってね。

 初音家左吉『ほやき居酒屋』。桂三枝のこの噺、あくまで、ぼやきでないと楽しくない。からみ酒になってしまうと聴いていて不愉快になってくるだろう。では本当に、ぼやきだけだったとしたら・・・それもつまらないだろう。からみ酒ギリギリのところ、そこが難しいんだろうけど、左吉はうまいバランスをもっているなと思った。

 むかし家今松一席目は『甲府ぃ』。二席目に入る前に今松自ら「日蓮宗の布教みたいな噺だ」と発言があったくらい、まあ、道徳の教科書みたいな噺。真面目に働くのが一番ってことか。まっ、一理あるけど。

 その山梨にある身延山久遠寺にある桜が見事なのだが、場所が場所だけに酒は飲めないというマクラからむかし家今松二席目『長屋の花見』。こちらは、真面目に働いているんだかいないんだか、貧乏長屋の貧乏花見。『甲府ぃ』のあとだと、真面目に働かなくても、金が無くても、こういう気楽な生活もまたいいかなあと思えたりする。

 仲入り後は、笑組の漫才。『走れメロス』は昔っからやっている定番ネタ。安定してるね。

 むかし家今松トリは『おせつ徳三郎』。うーん、人間真面目に働いていればいいのだが、『甲府ぃ』のように奉公先のお嬢さんと仲好くなって丸く納まる噺もあれば、こちらのようにそれがアダになる場合もある。世の中、難しいね。

 まっ、うまくいかないのが世の中。そうか、そうしたら居酒屋にぼやきに行けばいいのか。

4月5日記

静かなお喋り 4月4日

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