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客席放浪記

古今亭今輔ひとり会 落語黙示録ー第三章ー

2013年8月25日
なかの演芸小劇場

 番組表を受け取ってびっくりした。開口一番に今いちという名前が載っている。これって、ひょっとして今輔が弟子を取ったってこと? 挨拶がてら楽屋の前まで行くと、ちようど今輔師匠が出てきた。訊いてみると、去年の秋に弟子にしたとのこと。これは楽しみだと客席に。

 その古今亭今いち、千葉大学の落研出身だそうだ。ネタは今輔の師匠寿輔に教わったという『新聞記事』。滑舌がよくて聞き取りやすいし、声の通りもいい。そして、とてもまだ前座になって一年も経ってないとは思えないくらい上手い。寿輔に教わったからだろうか、変わったギャグがたくさん入っている。面白いよ。これは先が楽しみだ。ぜひこの人の新作落語を聴いてみたいものだ。

 古今亭今輔の一席目は、ついにヴェールを脱いだ弟子初紹介の話題から、自分が落研時代に体験した話をマクラとして語りだしたのだが、これが面白いのなんの。絶対にインターネットには書かないでくれと言うので書けないが、いやはや、落研というのも凄い世界ですな。入らなくてよかった。
 それで噺の『サムライ検定』は、彼女に振られた青年が、路上で椿三十郎と名乗るサムライに声をかけられる。もうここからしてナンセンスなのだが、このサムライ、青年のサムライ度を教えてやると、イエス、ノーで答える質問を始める。これがもうナンセンスの極みみたいなのばっかり。私は「シチュー引き回し」に大笑いした。

 二席目は古典。ミステリのトリックで一番多いのは、一人二役トリックだというマクラから『干物箱』。ははぁ、なるほどこの噺、作り変えるとミステリにも出来るんだ(笑)。

 三席目は『シュレディンガーの猫』。シュレディンガーの猫とは、有名な量子物理学の実験であり、論理学、哲学の題材でもある。箱の中に猫とラジウムとガイガーカウンターと青酸ガスの発生装置を入れるというやつ。それと、矛盾という言葉の語源になった、なんでも貫ける矛と、なんでも撥ね返す盾の話を絡め、最後はこの世はすべてトコロテンでできているというトンデモな結論に導く、唖然とする噺。強引だが、妙におかしい。なんだか理系の立川流みたい。この人の考えることは、歴史だったり科学だったり、普通の落語家とはやはり違う。おもしれえなぁ。

8月26日記

静かなお喋り 8月25日

静かなお喋り

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