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客席放浪記

六代目今輔全集vol.5〜ファンタジー編〜

2013年9月21日
Koenji HACO

 「『あまちゃん』で松田龍平の水口がブレイクし、『半沢直樹』が注目されている中、私の本名は水口直樹です」との喋り出しに笑いが起こる。一席目の『てるてる坊主大作戦』は、古今亭今輔が前座時代に作ったもののようで、すでにこの時点から歴史好きの今輔の本領が発揮されている。大学受験に失敗したのは、当日が晴れるようにと、てるてる坊主にお願いしたのに雨だったからだと、てるてる坊主に八つ当たりする男に、巨大化したてるてる坊主が、蒙古襲来のときに神風が吹かなかったらどうなったかとタイムスリップさせて歴史を変えてしまうという噺。もとはもっと長かったらしいが、歴史の部分を蒙古襲来のみに絞ったせいか聴きやすくなった感じ。これなら寄席にかけられそうだ。後半、てるてる坊主が『てるてる坊主』の歌に逆ギレするところが可笑しい。

 二席目の『ラッタッタ』は、スクーターに乗っていた青年が事故を起こし入院するはめに。すると女性の人格を持ったスクーターが青年に恋をしはじめるという、ファンタジーというよりホラーに近い噺。スティーヴン・キングの『クリスティーン』を思わせるけど、ちょっと違う。あっちは青年の方がクルマに恋していって取り込まれてしまうのに対し、こちらはスクーターの方が青年に恋してしまう。もっと長くしたら怖い噺になっていきそう。

 三席目の『東京幻想』は四年ほど前に一度聴いている。前半の都市伝説を語る部分が、ちゃんと伏線になっていて後半に繋がる。タイトルの付け方もよくて、いかにも小説家志望の青年が幻想の世界に入ってく作品のタイトルにぴったり。実際、この青年はそういうタイトルの連作短編集を書くことになるのだが、そんな小説集あったら読んでみたい。ラストもひと捻りしてあって、それがまた幻想的でいいなぁ。

9月22日記

静かなお喋り 9月21日

静かなお喋り

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