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客席放浪記

若手特選落語会 古今亭今輔IN日本橋

2014年3月27日
お江戸日本橋亭

 開口一番の前座さんふたり。三遊亭遊かり『狸札』と、昔々亭喜太郎『子ほめ』。ふたりとも自己紹介の短いマクラを付けて。前座はマクラをやるなとか言う人もいるようだが、観る側と立場としては、やはりちょっとしたマクラはやはり必要。前座修業、頑張ってね。

 昔々亭A太郎は、「古典をやりましょうか、新作をやりましょうか」と探りを入れて、これは今輔の会ということで新作好きのお客さんが多いだろうとの空気を読んで新作『表と裏』。プロ野球選手がホームランを打って、ヒーロー・インタビューを受け、「この喜びを誰に伝えたいですか?」と訊かれ、「今まで育ててくれた母親に伝えたいです」と言って帰る。すると奥さんが待っていて、「なんで私に伝えたいと言ってくれなかったのよ」と詰め寄られる。「今度は、お前だって言うよ」と返すと「あんたなんか二度とホームランなんて打てない」。ところが翌日またもやホームランを打ってヒーロー・インタビュー。同じことを訊かれ「私を支えてくれた妻に伝えたいです」。そして家に帰ってくると・・・。これ、おもしろいなぁ。スッキリしたストーリーだし、展開もどんどん凄いことになって膨らんでいくし。いや、いい噺を作ったもんだ。

 古今亭今輔の一席目は、ネタおろしのときに聴きに行かれず、いつか聴きたいと思っていた『崇徳院・怨霊編』。歴史好きの今輔が、古典の『崇徳院』に殴り込みをかけた一席。崇徳院なんて、怨霊伝説の人物だと明かし、古典『崇徳院』をぶっ壊している(笑)。恋煩いの若旦那も、水の垂れるような女性も、その正体は・・・。これ、いいなぁ。ガチガチの古典マニアの観客の前では出来ないかもしれないけど(笑)。

 仲トリは柳亭楽輔。マクラから、飛ばしに飛ばしまくる。「熱中症って怖いですね。夜中にね、うちの女房が起き上って、私の顔に覆いかぶさってきて・・・『ねえ、チューしよ』。怖かったぁ〜」「そんな女房が、肩が痛い、腰が痛い、膝が痛いって、痛いとこだらけ。『どこか痛くないところはないのか?』って言ったら、『あなたといたくない』だって」「秋の果物捨ちゃっう人がいるでしょ。滝川クリステル。栗捨てちゃって、梨を拾って言ったんですってね。重てえなし」
 こんなのピーディーに調子よく20分くらいやって『火焔太鼓』。噺の方もテンポよくて明るい。

 仲入り後、笑福亭里光。見台と膝隠しを置いて、上方落語の説明。でも、これを使わないで『荒大名の茶の湯』

 紙切りの林家花。珍しい女性の紙切り芸人。高座に上がるようになって三年半だそうだが、私は観るのは初めて。まずは鋏試しで、舞妓さんを切ってみせたが、なかなか女性らしい線で、色っぽい作品に仕上がっている。お客さんからのお題は、宝船、桃太郎、歌丸師匠。桃太郎は犬、猿、雉、すべて付けた。

 古今亭今輔、トリのネタは、私は三回目になる『東京幻想』。さすがに三回目ともなる落ち着いて聴ける。三つ編みの左門豊作みたいなタマコが語る都市伝説。よくあれだけ数考えたなぁ。洪水のように繰り出す都市伝説の数々に頭がクラクラしてくる。これを考え出すだけでも凄い。なんかひとつひとつ、落語のネタになりそうなアイデア。着地するサゲも上手い構成。よく出来た噺。私なんかにはわからない地方出身者だから思いついた噺のようにも思える。

3月28日記

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