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客席放浪記

落語黙示録ー第五章ー古今亭今輔ひとり会

2014年8月30日
なかの芸能小劇場

 開口一番前座さんは、瀧川鯉和『桃太郎』。ああ、新聞社で記者やってたのに、なぜか落語家になった人だ。そういえば、そろそろ四年になるんじゃないかなぁ。二ツ目近いよね。声も大きいし、話し方もいい感じになってきてる。残りの前座修業頑張ってね。

 今日の古今亭今輔、なんかテンション高め。古典落語をやっている落語家は受けなくても、自分は伝統芸能をやっているんだというところに逃げられる。自分は常に新作落語で闘っているんだと宣言。さらには、ブログで偉そうなことを書いている落語通から、自分に向け「落語を舐めてるのか」といったミサイルが飛んでくると打ち明け、こういうやつらに対して反撃。腹に据えかねているのか、今日の今輔は、やたら元気だ。
 今輔といえばクイズ。かつてクイズ番組で「アマゾン川で」というところまで問題を読まれた時点でボタンを押し、「ポロロッカ」と答えて正解したという伝説の人物のことをマクラにして『雑学刑事』。これは以前演っていたものにだいぶ手を入れたあとがみられ、より面白くなっていた。さすがに得意分野の題材だけあって、どんどん良くなっている。

 二席目は古典の『家見舞い』。これ、今まで今輔が手掛けた古典の中でピカ一の出来。江戸という時代は、究極のエコの時代だったというマクラが面白い。石川英輔の本あたりが元ネタなんだろうが、この話題を解りやすく簡潔に語るあたりは、さすがに喋りのプロ。噺に入っても、エチケットの語源などミニ知識が入ったりする。このあたりもクイズ、雑学好きの今輔らしい。

 仲入り後は、ネタおろし二席。ここでもテンションはそのまま。『万能細胞』は、偶然に万能細胞を作り出してしまった男の噺。その細胞と言うのがミクロの世界ではなく、座布団大の、まさに座布団の形をした細胞。座布団のような細胞はまさに万能で、言葉を喋ることも出来る。三遊亭白鳥や林家彦いちばりの座布団芸炸裂。なんか高座でこんなに弾けまくっている今輔って初めて観た。

 もう一席の『不射之射』は中島敦の『名人伝』が出典らしい。これまた上手く落語にしてあり、聴き入ってしまう。今輔にしては笑いの要素は少ないが、この人、こういうものを語らせても上手い。十分に堪能したが、どうやら今輔は、さらにオリジナルでくっつけたサゲの部分になるところをやりたかったようだ。これはこれで可笑しいのだが、いやいや、この噺、よく元の小説を、よくこれだけの落語にしたものだ。トリに相応しい噺が出来上がっていた。そう言うとご本人、テレて謙遜するんだろうけど。

8月31日記

静かなお喋り 8月30日

静かなお喋り

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