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客席放浪記

古今亭今輔の会 in 日本橋

2015年5月26日
お江戸日本橋亭

 芸協がお江戸日本橋亭の定席の枠で、若手に自分で顔づけまでやらせて行っている興行の、今夜は古今亭今輔。人脈というか、その人の好みがわかったりして興味深い。ふう〜ん、今輔が選ぶと、こういう顔づけになっていくのかぁ。去年の3月にもこの会はあったけれど、今年の方が今輔らしさが出た顔づけになったようが気がする。

 前座がふたり上がるのは、この興行のいつものこと。
 今日は瀧川鯉佐久『新聞記事』と、神田みのり『寛永宮本武蔵伝・吉岡治太夫』。ちなみに宮本武蔵は出てこない。後に武蔵と因縁が広がっていく京都の吉岡道場が、まだ出来たばかりのころの噺。吉岡流の話を最初っから書いたものがあれば面白いだろうなぁ。吉岡流の側から武蔵を見るというのも興味あるし。お二人とも前座修業、頑張ってね。

 桂翔丸は珍しい噺『貧乏神開帳』。参詣人がさっぱり来ず、お賽銭が集まらなくて困った寺の和尚が、ご利益があると言って秘仏の開帳があると宣伝する。もちろん真っ赤なウソなのだが、いろんなご利益を考えるものの、それでも参詣人は集まって来ない。どうしたのかと思ったら、この寺に貧乏神が棲みついていたことがわかる。そこで・・・。江戸小噺を落語にしたものらしい。初めて聴いたけれど、これ、楽しい噺だねぇ。

 古今亭今輔の一席目は、私も初めて聴く『リアル人生ゲーム』。迷い込んだ異次元空間で、人生の一発逆転をかけてボードゲームの人生ゲームをやる男の噺。この一回だけのゲームで、このゲーム通りの人生にスイッチできるというSFっぽい設定が面白い。男の望みはいろいろあるが、奥さんに裸にエプロンをさせたかったというのが最終目的っていうのが、ちっぽけだけど可笑しくていい。これ、定席でかけても受けそうに思うけれどにぁ。

 「65歳になりまして、去年から年金を貰っております。わずかなものでございますが、偶数月の15日が楽しみ」と桂歌春。白髪だけれど、とてもそんな齢には見えない。若いよなぁ。ネタは『たがや』。両国橋でのお侍とたがやの騒動。黒山の人だかりで野次馬が集まって来るが中が見えない。「何があったんだい?」「裸にエプロン」

 仲入り後。瀧川鯉朝は、「改作が好きでよくやるんですが、今日は中でも、もっとも評判のよくなかったものを」と『崇徳院・裏バージョン』をたっぷり。表バージョンも得意な鯉朝だから、どうしても熱が入る。

 コント青年団は、いつもの、ガードマンとヤクザ。刑期を終え出所してきたヤクザだが組は解散していて、アニキはガードマンのアルバイトをしている。「時給950円だよ。週五日入ってくれれば1000円払うと言われてるけれど、それだと芸人だと言いにくい」。本音かね。「長いこと世間から離れていて、世の中のこと知らないだろ。AKB48って知ってるか? ロシアの新しい自動小銃だよ」

 古今亭今輔のもう一席は、なんちゃって本格推理落語『六角館の犯罪』。横溝正史のパロディではなく、今輔に言わせるとオマージュ。マクラでバカミスについて触れ、この落語もいわばバカミス、いやバカミスラクゴということなのか。横溝正史の代表作を読んでいれば、笑えること必至。今日のお客さんは、横溝正史作品のディテールをよく御存じのようで、笑いが大きかった。後半は理系の話に発展して行くトンデモ推理。これはさすがに定席ではやりにくいかもね。

5月27日記

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