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客席放浪記

第20回射手座落語会(最終回)

2015年11月18日
湯島天神参集殿

 石井徹也が主宰する落語会。ようやくチケットが手に入ったと思ったらなんと今回で最終回。主宰者の体調が理由らしいのが気になる。

 開口一番前座さんは林家たま平。いきなり来た。今日の出演者のひとり林家正蔵の息子だ。初めて聴く。『一目上がり』。いや〜、上手いは! かなり仕上がりがいいよ。親の七光りなんてもんじゃない。周りからの刺激もあるのだろうけれど、いい喋りになっている。下手すると父親を抜くかも。あとは周りの刺激はいいとして、周りからのブレッシャーもすごいだろうから、それを跳ね返せるかかも。一応、たま平にも書いておこう。前座修行、頑張ってね。

 この会は、林家正蔵、柳家喬太郎、立川生志の三人一席隻ずつの会。出演順は毎回アミダクジで決めているそう。

 柳家喬太郎は膝に痛みを感じるそうで、高座に座るなり正座の姿勢を何度も微調整している。ついには立ち上がって脚のストレッチを始めた。会場は座敷で座布団敷きだが、お客さんはみんな足を崩して座っている。後ろの方は椅子席。それを見て喬太郎、「いいなぁ、あっちで私も座ってやりたい」。正座が辛いと落語家もたいへんだ。
 寒くなってきたので冬の噺をと入った『按摩の炬燵』。会場に暖房が入っていて汗を拭きながら。
 話しながらどうしても膝の痛みで正座が辛いようで、按摩が酒を飲みだしたところから、「もう胡坐かいちゃおうか」と足を崩した。按摩が酔っぱらって言いたいことを言い出す個所。こうなると喬太郎の強さが出る。いつしか按摩の話していることだか、喬太郎が実生活を話しているんだかごちゃまぜになってくるんだから楽しい。師匠さん喬への思いを語りだすあたり、「いい師弟関係だなぁ」と思えてくる。「お前は好きにやれ」と言ってもらえるなんて、そんな人滅多にいるもんじゃない。

 立川生志は、先月行ったミュンヘンとパリのマクラを長く聴かせた。これが実に楽しいマクラだった。そこから旅の噺に繋げる。『猫の皿』。旅人が猫を手懐けようとする仕種が、ああ〜、この人はきっと猫を飼ったことがあるんじゃないかと思わせる。猫を知らないとなかなかこの仕種はできない。出てくる猫の名前が最後に来て「バチ」だとわかるというのが面白い。おばあさんの名前が「ウメ」。合わせて「ウメバチ」。ほかにも「コウ」と「ライ」を飼っていて、全部合わせて「高麗の梅鉢」。アハハハハ。

 「二楽から聞いたんですが、喬太郎と仕事で奄美大島に行ったとき、喬太郎も泳ぐって言い出したんですって。服を脱いで海に入ったその姿が・・・ジュゴン!」。こんなマクラから林家正蔵『しじみ売り』。きっと正蔵は自分の落語を、爆笑落語でも濃厚な人情噺でもなく、軽い人情噺に自分の位置を決めたようだ。それはある意味、正解かもしれない。こういう噺を力を入れずにサラッと聞かせる。ひういう人って、案外少ないんだよね。

11月19日起

静かなお喋り 11月18日

静かなお喋り

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