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客席放浪記

JAL名人会

2016年2月23日
内幸町ホール

 機内放送用公開収録。なかなかの顔付けが1,000円という低料金で観られるからありがたい。飛行機には滅多に乗ることないしね。

 柳家圭花。花緑の弟子。『初天神』を10分。飴まで。前座修業頑張ってね。

 桂三木男『猿後家』。出入りの男が猿に似ているおかみさんを前に、(雷門で)「猿回しを見た」と言ってしまったことに気が付いて、無言で固まってしまう。その間が体感的に長い。機内放送収録ということを思うと、「大丈夫なんだろうか?」と気になってしまった。アハハハ。

 春風亭柳好もマクラで、女性の仕種について語るところで心配になってしまうところが。たとえばイヤリングを外すときに右耳のイヤリングは右手でなく左手で外すと、傍から見てきれいに見えるという。それを実際にやってみせるのたが、機内放送の人は見えない〜。でも想像しただけでこれはわかるね。
 噺は『宮戸川』。落語には珍しい青春物語。柳好はそれを生き生きと語る。このお花、半七を爽やかに演じられる人って意外と少ないんだよね。

 『JAL名人会』は東京収録だが、上方からひとり入ることが多い。これもお得感がある。今日は笑福亭松枝で、上方落語の定番ネタ『三十石』。これが聴けるのはうれしい。途中、焼きいもを食べる仕種を無言で細かく見せてくれた。「機内放送でお聴きの人は、なんのことかわからんかったでっしゃろな」。

 宮田陽・昇の漫才といえば、日本地図のネタが有名。想像上の大きな空間に身体で日本地図を作っていくのだが、「北海道、青森、秋田、岩手・・・」とやって、「よしなさい、機内放送聴いている人にはなんのことかわかんないから」。
 「今年の春の話題といえば北海道新幹線」「これJALの機内放送用だよ、JRの話題振ってどうするの」。ウハハハハ、逆手にとりだしたぞ。「秋田新幹線、盛岡を出ると単線ですよ。駅で反対方向の電車待ち合わせをする。電車が停まると、物売りがやってきて電車の窓を叩く」「アジアかよ」「車両の屋根にも人が乗ってる」「インドかよ」

 高座に湯のみが置かれて、トリが柳家小満ん。高座に座ってマクラもなく入ったのは、滅多に聴くことのない『盃の殿様』。参勤交代で江戸にやってきた殿様が吉原に行って、その虜になり、300里も離れた自分の城に帰っても吉原が忘れられなくなるという、なんとも浮世離れした噺。小満んの話し方は、いわば古いタイプのもの。時折お茶を啜りながらの語り口は三遊亭圓生に近い。いろいろ工夫を凝らした最近の落語もいいが、こういう落語に接すると、なんとも落ち着く。これが以前までの落語の楽しさだったよなと思える。この懐かしさ、とても居心地がいいんだなぁ。
 小満ん、現在74歳。小満んの落語が聴ける喜びをわかる人って今は少なくなってしまったのかなぁ。

2月24日記

静かなお喋り 2月23日

静かなお喋り

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