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客席放浪記

JAL名人会

2017年8月24日
内幸町ホール

 機内放送の公開録音とはいえ、千円で五組二時間半の演芸が楽しめるなんていう催しは、そんなにない。常連になっているサラリーマンの姿も多い。今日は当日売はなく、前売で完売だそうだ。

 古今亭始『湯屋番』。憧れの番台に座った若旦那の妄想が止まらない。「やがてお客さんといい仲になったりするよ。でも主ある相手はいけないよ。『週刊文春』がうるさいからね」

 「最近は風呂が付いている飛行機ができたんですってね。旅客機ではありません。戦闘(銭湯)機。行く先は一つだけしかありません。さあみなさんご一緒に、はい」、「ニューヨーク」。春風亭柳之助は、『荒茶』がネタ出しされていたが、なぜか始まったのは『竹の水仙』。『荒茶』は汚い噺だから、『竹の水仙』でよかった。

 「夜中の2時。車運転して私が住んでる田舎の方まで来たんですよ。信号は赤。でも誰も歩いていない。車も一台も通っていない。行く? 走り足したらパトカーが物陰から出てきた。「免許所見せてください。・・・(上の方を指差して)見えなかったの?」 「月?」 「赤信号」 「赤信号は見えたけど、お巡りさんは見えなかった」。八方破れみたいな芸風が楽しい三遊亭笑遊『くしゃみ講釈』の途中で痛恨のミス。私はこういうところが好きなんだけど、これ機内放送で流してもらえるのかな?

 テツandトモ。どちらかというと動きの芸。機内放送に向くのかどうか・・・。トモの談志の物真似もどちらかというと顔芸で、声はあまり似てないし。テツの踊りも音だけだとわからないし。最後にめくり台を顎の上に乗せるという、太神楽の人も真っ青という荒芸を見せてくれたけど、これも機内放送ではまったく伝わらないだろうし。

 「いいですかみなさん。面白くなくても笑う。笑えば面白くなるんです。千円でそんなに面白いものを求めてはダメ!」。三遊亭歌武蔵はお得意の大相撲のマクラから『甲府い』。この噺のキモはサゲの一言にあるのだと思う。それまでは甲府から出てきた若者が豆腐屋に奉公して一生懸命働くってだけの噺だから、あまり面白くない。それを最後まで引っ張っていくというのは、やはり話芸だ。歌武蔵はうまく笑いを詰め込んで最後まで持って行った。そしてあのサゲは、やはりカタルシスを感じるよなぁ。

8月25日記

静かなお喋り 8月24日

静かなお喋り

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