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客席放浪記

劇団東京乾電池創立40周年記念本公演
ただの自転車屋


2016年6月26日
本多劇場

 柄本明、ベンガル、綾田俊樹の、東京乾電池創立メンバーによる芝居。脚本は北村想の書き下ろし。

 鹿児島県の離島。宿の一室。脚本家(ベンガル)と監督(綾田)が、カンヅメになって次回作の脚本を書きにやってきている。季節は夏。ところがエアコンが故障していて、暑くてシナリオ製作どころではない。もう15年前の型のエアコンの前で、男(柄本)がひとり首を傾げている。男は電気屋かと思いきや、島の自転車屋。島には電気屋は無く、電気工事士の資格を持つ自転車屋がやってきているのだが、どうやったら直るのか考え込んでいる様子。部屋にはもうひとり、俳優(山地健仁)もいるのだが、ほとんど会話には加わらない。テレビのニュースでは、どうやら台風が接近してきているらしい。

 終盤に至るまでは、ほとんど動きがない。脚本家と監督、そしてエアコンの前の自転車屋の、とりとめのない会話が続いて行く。昔の映画や映画スターの話。邪馬台国の話。この島にあったうどんのおいしい店と女店員の話。どうでもいいような話が交わされていくのだが、ビールの話が可笑しかった。ビールを冷やして飲むのは日本だけだと言い出す。西部劇の酒場で出すビールは絶対に冷たくない。冷蔵庫も氷も無さそうだし、チェイサーから継がれるビールは絶対に冷えてないというのは、その通りなんじゃないかと思う。

 それが終盤に差し掛かると、今までの会話が意味を持ち始め、大きく展開する。

 上演時間1時間35分。役者は全員板付きで登場して、最初から最後まで舞台の上。柄本67歳、ベンガル64歳、綾田66歳。若い時のように身体が動かない。滑舌も悪くなっていて台詞が聞き取りにくいところがある。第一その台詞も、噛む、飛ばす、忘れるといった状態。もともとコントで売り出した人たちということもあって、お客さんたちも、このグズグズ感を楽しんでいるようなところがある。別にキチッとした芝居なんて期待していないのかもしれない。

6月27日記

静かなお喋り 6月26日

静かなお喋り

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