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客席放浪記

第418回日本演芸若手研精会

2016年5月26日
お江戸日本橋亭

 平日昼間、それも二ツ目の会なのだが、それでもけっこうお客さんが入っている。前売・予約が1,000円だということもあるがのだけれど、私を含めリタイアして暇のある人たち中心に、やってくるらしい。以前は二ツ目の会など、お客さんはほとんど集まらなかっただろうに、二ツ目にはいい時代になった。

 開口一番前座は、柳家小はぜで『のめる』。前座修業頑張ってね。

 出てきた桂宮治の様子がおかしい。四日前に『寝床』をネタおろしした高座ではしゃぎすぎて、どうやら肋骨を折ったらしいという。「痛みがますますひどくなってジッとしていても痛い」と、かなり辛そう。「無理するなよ」との客席からの声だったが、『棒鱈』に入って行った。
 これがもう、飲んでいる二人組から隣の部屋の田舎侍、果ては最後に出てくる料理人に至るまで全員が肋骨に痛みを抱えるキャラクター。笑っていいものかどうか困るところだが、つい笑ってしまう。この反則的落語に飲まれてしまって、あとから出てきた三人の落語は影が薄くなってしまった。
 短く終えて、「これから病院に行きます」と高座を下りた。

 すっかり宮治に攫われてしまい、次に上がった柳亭市童もやりにくそう。「肋骨が折れているっていうのはウソですからね」と言ってみても、あれはウソじゃないだろ。
 『竹の水仙』をきれいに演じた。喬太郎や鯉朝のように、この噺にエキセントリックな人物アレンジは施していない。師匠市馬ゆずりの、壊さない噺の作り方。

 仲入り後。
 入船亭小辰『団子坂奇談』。この人も師匠扇辰に近い話し方をする。このあとに出た市楽によると、文左衛門の師匠の文蔵がこの噺が得意だったそうで、学校寄席でもやったそうだ。サゲもふたつあって、まったくのホラーにしてしまうというサゲがあったのだとか。どちらにしても『もう半分』と並ぶ、落語の名作怪談だろう。

 柳亭市楽『明烏』。この人の場合は、登場人物が全員テンションが高いのが面白い。立場、性格こそ違え、多助、源兵衛も若旦那も父親も、出てくる人物がみんなテンションが高くて同じスピードで喋る。
 多助と源兵衛が、本ばかり読んでいるという若旦那をバカにして「子曰く 女を買って遊びましょ って言ったろ?」と、からかうと、「孔子に謝ってください」と怒り出す。「へへえ〜、謝ります、謝ります」。

 肋骨を折ったという宮治は大丈夫だろうか? それにしても高座で落語をやっていて肋骨を折るって、どんな『寝床』だったんだ?

5月27日記

静かなお喋り 5月26日

静かなお喋り

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