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客席放浪記

君となら

2014年8月28日
Parco劇場

 以前、三谷幸喜の書いた脚本の公演を、三谷幸喜自らの手で演出しなおしたもの。初演のものは観ていない。

 時代設定は昭和だろう。携帯電話はまだ無いが、ポケベルが全盛だったころ。なんだかもう、やたら懐かしい時代の出来事に思えてくる。実際、ケータイが存在する時代だと、ちょっと成立しにくい話であるかもしれない。

 お話の方は、ちょっとしたホームコメディ。テレビや軽演劇の世界に近い。本当の事を言えなくて→ついつい言いそびれてしまい→結果的に嘘をついたようになってしまい→その嘘の綻びを繕おうとすると、余計おかしなことになって行ってしまい→さらに誤解が生じ→どんどん収拾がつかなくなって行ってしまう。といった、コメディの黄金のパターン。ただ、そこは三谷幸喜。やることが徹底している。一時間で収束させてしまいそう話を二時間やるものだから、混乱はどんどん積み重なり、膨らみ、広がっていく。観ている方も話がゴチャゴチャしてくるのたが、可笑しいものだから退屈する暇もない。冷静に考えると、いかになんでも、こんな変な状況になれば当人同士だって気が付くだろうと思うのだが、そこがお芝居の可笑しさ。観ている側は、それを承知で混乱の度合いが深くなればなるほど笑いに繋がっていく。

 こういうお話は、天然ボケのキャラクターがいて成り立つことが多い。その役が、主人公の竹内結子と長野里見。この天然さがご本人のものかどうかわからないが、うまくキャラクターを演じている。事態をなんとかしようと動き回るのがイモトアヤコ。テレビのレポーター役で人気だが、もともとはお笑いタレント。こういう役回りはうまいね。

 男性陣は渦中の人物に小林勝也。いい芝居をしているが、この役、ひょっとして伊東四朗がやったらどうだったろうなと思う。でもやっぱり伊東四朗だとやり過ぎちゃうかもなぁ。長谷川朝晴と木津誠之は事態を、どんどんややこしくしてしまう役。そして草刈正雄が「もう知らん」とそっぽを向いてしまう役どころ。これがなかなかいいんだなぁ。最初に観たときに、「えっ! これが草刈正雄?」と、びっくりしてしまった。なんかねぇ、落語家の柳家喜多八みたいなんだもの(笑)。

8月29日記

静かなお喋り 8月28日

静かなお喋り

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