吉良ですが、なにか? 2014年11月27日 本多劇場 二日続けて三谷幸喜脚本の新作を観ることになった。しかも、どちらも平日のマチネ。三年前までは平日は仕事で芝居見物どころじゃなかった。ましてや平日の昼間に芝居を観に行かれる人なんて、どんなやつだと思っていたのだが、まさか自分がこういうことになるとはねぇ。 伊東四朗の喜寿を祝って三谷幸喜が書き下ろしたもの。なにしろ稽古当日に台本が出来てないことで有名な三谷幸喜。八月末の段階で演出のラサール石井のところにはまだ一枚も台本が届いていないと言っていたから、大丈夫なんだろうかと思っていたら、意外と早く台本が届いたそうで、本人たちも拍子抜けしてしまったとか。それでも、ラサール石井が三谷幸喜から聞かされていた話では、吉良邸討ち入り前夜の話で、最後にラサール石井が大石内蔵助の役で出てくるということを聞かされて、そのような扮装をしてチラシに収まっているのだが、蓋を開けてみれば大石内蔵助の役はなく、ラサール石井は別の役での出演。 刃傷松の廊下の様子が音だけで聞こえてきて、舞台が明るくなるとそこは病院の待合室。なぜか現代だ。会社社長の吉良という人物が部下から斬りつけられて病院に担ぎ込まれたという報を聞いて、吉良の子供である三姉妹とその亭主などが続々とやってくる。医師の説明では傷は大したことなく、入院の必要はないということなので、一同ホッとするが、事はそれだけでは済まなかった。吉良には愛人がいることが発覚。しかもその愛人がずっと吉良の面倒をみて付き添っているのだ。大騒ぎになる家族。しかしこの愛人、なかなかに出来た人物で誰にでも好印象を与えるし、誰からの相談にも的確なアドバイスを出す。それだけでなく、斬りつけてきた浅野が切腹を言い渡されたと知ると、必ず仇討ちに来るだろうと言いだす。 ん? 『忠臣蔵』と別の現代劇が入り乱れていると思っていると、これが最後にちゃんと説明がつくところが三谷幸喜らしいところ。もっとも、やや安易な説明なのだが、それはどうしようもなかったのかもしれない。実際、吉良には三人の娘がいたのだそうで、それを調べて書いたとのこと。歴史好きの三谷幸喜ならではですね。 やはり三谷幸喜の脚本は上手い。同じ伊東四朗でも伊東四朗一座なんかの脚本よりはずっと面白いし、まとまっている。それでいてわかりやすくて上質なコメディ。うらやましい才能としか言いようがない。 11月28日記 静かなお喋り 11月27日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |