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客席放浪記

夢月亭清磨『ダウンタウン渋谷』

2017年10月13日
神保町・らくごカフェ

 夢月亭清磨のネタおろし90分長講一席。

 マクラで清麿は、映画『アパートの鍵貸します』を落語で演るとすれば25分で終わると語り、90分の落語はテレビドラマ200分の分量があるとしていた。まさか、と思ったがこの90分の落語『ダウンタウン渋谷』、端折ってしまった過去のシーンまで丁寧に入れて行ったら、そのくらいの長さになるのかもしれない。
 マクラに10分。そのあと噺に入って、たっぷり90分あった。

 80過ぎの老紳士が、大宮から電車を乗り継いで表参道で降り、宮益坂まで歩いてくるところから物語は始まる。
 宮益坂から渋谷方向を見下ろす。ここから道玄坂の間の谷になったところ、そこが渋谷の中心部。渋谷とはよく言ったもの。まさにタイトルどおり、ここは坂を下った街、ダウンタウン。
 老人は「東京オリンピックの年は、私は30歳で、この街で過ごしたものだ」というモノローグがある。このさりげない一言があとで効いてくる。
 老人のモノローグは続き、渋谷という街の戦後史が語られて行く。これもあとになって重要になる。
 やがて老人の前に小学校5年生の男の子が現れ親しくなる。さらには渋谷の街のケーキ屋で働くアラサー女性も加わり、三人は渋谷の街を、観客に紹介して歩き回る。台湾料理[麗郷]、カレー[ムルギー]、名曲喫茶[ライオン]、フルーツパーラー[西村]。そして東急東横店地下食品売り場の[FoodShow]。これらはまだ今でも渋谷に存在する。
 そうかと思うと今は跡形も無き[リキパレス]、プラネタリュームがあった[東急文化会館]。
 そんなタウンガイドを聴いていると、また渋谷の街をブラブラと歩きたくなってくる。
 やがて噺は、少年の妹が入院中で、アメリカで移植手術をする必要があり、そのためには二億円必要だという展開になる。二億円をどうにかできないかということから、噺は急転直下に向かう。実は老人、小学生、アラサー女性が実は結びついていたことがわかってくるのだが、それが戦後すぐの渋谷にかかわっているという、上手い構成になっていた。

 うまくできた噺で、もう一度聴きたいが、90分もあるから、残念ながらこの先なかなか聴く機会はなさそうだなぁ。

10月14日記

静かなお喋り 10月13日

静かなお喋り

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