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客席放浪記

こどもの一生

2012年11月22日
澁谷。PARCO劇場

 中島らもの戯曲の何度目かの再演。

 舞台は孤島にある精神科の施設。子供のころの精神状態に戻すことにより、心を解放させる療法を行っている。そこへ送られてきた男女五人の大人。
 子供の精神状態に戻すのには成功するが、子供ってけっこう残酷なもの。中の一人が途端にガキ大将のいじめっ子になってしまう。それに嫌気をさしたあとの四人が、仕返しを思いつく。四人だけが知っているとする、あるおじさんを想像上で作り出し、そのおじさんの話で盛り上がり、ガキ大将を仲間外れにする。四人はそのおじさんの特徴をパソコンの中で文字にして保存しておくが、そのことを知ったガキ大将は、それに余分なことを書き足してしまう。
 すると、存在しないはずのおじさんが、現実に現れてきてしまう。書き足されたおじさんは、殺人鬼となっていてチェーンソーを持って襲いかかってくる。

 中盤までは、どうも話に乗れずにいたが、架空のものであったはずのおじさんが現れてからは途端に面白くなった。かなり怖い話なのだが、どこか笑ってしまうようなところもある。「頭、パックンチョ」なんて、つまらないと思っていた言葉が、現実に架空であるはずのおじさんが現れると、笑いと恐怖に変わる。この役を演じた山内圭哉が実に不気味でいい。まあ、中島らものリリパットアーミー生え抜きの役者さんだし、こういうのに向いているのかもしれないけど。
 不思議なもので、これはきっと映画にしてもこれほど怖くないかも知れない。なんだか現実に、その場にいるはずがない者がいる恐怖とでもいうのだろうか。そんな人物が舞台にいるという恐怖。チェーンソーを持って客席にまで入ってくるんではないかという妄想が起きたり。
 ちょっとしたお化け屋敷演劇。遊園地のお化け屋敷は嫌いだけど、こういうのならまた観たいな。

11月26日記

静かなお喋り 11月22日

静かなお喋り

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