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客席放浪記

2012年3月22日 高度勢朝の会(池袋演芸場)

 開口一番前座さんは、柳家フラワー『元犬』。頑張ってね。

 「三人の兄弟が、父の馬十一頭を相続した。遺言で長男は二分の一、次男は四分の一、三男は六分の一の取り分だが、十一頭をこの割合では分けられない。そこへ馬に乗った叔父がやってきた。事情を話すと、『それじゃあ私の乗って来た馬をあげよう』と言う。これで十二頭になった。長男は二分の一だから六頭。次男は四分の一だから三頭。三男は六分の一だから二頭。そうすると、六頭に、三頭に、二頭だから十一頭で、一頭余る。『それじゃあ、この私の馬は返してもらっていいね』と叔父さんは去っていった。・・・あっ、あまり深く考えないでくださいね」と、柳家一九は、間髪入れずに『壺算』へ。えっ、えっ、どういうこと?

 春風亭勢朝は楽屋話を語らせたら、これ以上の人はいない。実際にあったことや、うまく作ってあるそれらしい話など、いくらでも出てくる。「立川談志師匠は郵便貯金をするのに30万4円みたいに、わざわざ変な端数をつけて貯金する。あるとき弟子に、20万6円貯金させに行った。ところが預金通帳には20万ちょうど貯金したことになっている。師匠すぐに郵便局に電話して『6円はどうした!』 電話代だけでも10円かかるだろうと思ったら、コレクトコールだった」 こんな楽屋話をふんだんにマクラにして『親子じか』へ。
 ネタに入る前にやるのをマクラというが、ネタに関係ないのは雑談。『親子じか』は、息子を落語家にさせようとする噺だから、マクラ、なんだ、ろう、ねえ。もっともネタの方にも楽屋話が盛り込まれているから、何がなんなんやら。

 中入り後は初音家左橋『長屋の花見』。卵焼きに見立てたタクアン、蒲鉾に見立てた大根のシンコ。疑似卵焼きに、疑似蒲鉾だ。毛氈はムシロを代用。「(毛氈が)無いより、ムシロいいだろう」

 春風亭勢朝、この日のトリは『ねずみ穴』。気がついたら、勢朝のこういう人情噺は聴くのが初めてだった。いつも楽屋話や世の中の面白話で煙に巻くか、笑いの多いネタしか聴いたことが無かった。ここではいつもの脱線などを入れずに、兄弟ならではの人情のやり取りを描いた噺をじっくりと語っていく。勢朝の別の一面を見た思いがした。

3月23日記

静かなお喋り 3月22日

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