第26回深川森下落語会 2015年8月18日 芭蕉記念館 二ツ目の、昔々亭桃之助、桂夏丸が[森下文化センター]で隔月で開催していた落語会。[森下文化センター]が先月から13ヶ月間の改装工事に突入してしまったので、今月から、ここ[芭蕉記念館]に移ってきたそうだ。 桂夏丸が恐る恐る高座に上がる。落語会として初めて使う会場で、高座用に使った備品のテーブルが車輪付きなものだから、下手に乗ると動いてしまうらしい。机が動かないように慎重に上がって座布団に座れてホッとした様子。会場がこちらに移ったことの経緯やら、マクラをたっぷり20分。懐メロ好きとして知られる人でもある。もちろん筋金入りの戦後歌謡のこと。最近は平成生まれの芸人さんも増え、「私も懐メロ好きです」と言われて「誰の歌が好きなの?」と訊きかえすと「松田聖子にキャンディース」と言われてガックリくることがあるそうだ。「そのうちに、モー娘。を懐メロと言いだす人が出てくるのではないでしょうか?」と結んで『茄子娘』。先日亡くなった入船亭扇橋の得意ネタだった。飄々とした扇橋の話術にとてもよく似合っていた噺だが、夏丸も肩から力が抜けた口調で、このとぼけた噺を、かる〜く10分で。 二年前から日本舞踊を習っていると話し出した瀧川鯉輪。西川口の雑居ビルで下は全部風俗店。そこに不法滞在のガサ入れが入ったというマクラ。ふ〜んと聴いていると、とんでもないオチが待っていた。どうもこれが言いたくて作ったハナシらしい。そうかと思うと石川県宝達志水町にある珍スポット、モーゼ゙の墓のことを語りだした。真剣に聴いていたら、最後にまた人を食ったオチがあって大笑い。これらのマクラが、『権助魚』で、めざしや蒲鉾まで網取り魚だと、真面目顔で言いだす権助とダブッて可笑しい。おそらく鯉輪って根は真面目な性格の人なんじゃないかと思うのだが、どこか人を食った笑いが持ち味。これからもこの線で高座を組み立てていくんだろうなぁ。 「鯉和改め鯉輪。彼の出身の輪島の輪を取って、同じく、こいわと呼ぶのかと思ってましたら、こいりんですって」と昔々亭桃之助。鯉輪って、芸風だけじゃなくて、名前からして人を食ってるよなぁ。もっとも桃之助の演った『あくび指南』も人を食った噺。臨終のあくびって、どんななんだろう? もう生きているのに飽きちゃって死ぬ間際にあくびが出るんだろうか? 夏丸、桃之助は真打昇進まであと二年といったところか。鯉輪は二ツ目が始まったばかり。彼が真打に昇進するまで生きて見届けたいものだ。私はまだまだ人生に退屈はしてないよ。 8月19日記 静かなお喋り 8月18日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |