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客席放浪記

小さんひとり千一夜 春編・春曙値千金

2015年4月10日
渋谷区文化総合センター大和田伝承ホール

 開口一番の前座さんも無く、柳家小さんが仲入りを挟んで二席。

 二席ともネタ出しがされており、一席目は『桜の木の下に』となっていた。これは『あたま山』を最後に持って来て、前半は『しわいや』と呼ばれる、ケチな男の小噺集。序盤で『後生鰻』や『疝気の虫』のダイジェスト版まで入ってサービス一杯。『あたま山』に入ってからも、『長屋の花見』は出てくるは、『花見の仇討ち』は出てくるは、『野ざらし』は出てくるはの大騒ぎ。春に相応しい、なかなかお賑やかな一席。45分。

 二席目は、先代が得意にしていたという『将棋の殿様』だが、私はこの噺を聞くのは初めて。先代も滅多にやらなかったのではないだろうか? 調べてみると柳家で、喜多八、市馬、小里んらが演っている。柳家以外でも、今松や、驚いたことに夢吉なんかも演っている。それでもそれほど多くの人が演っているわけではないようだ。ではあまり面白くない噺かと言うと、そうでもなくて、これは面白い噺だと思う。将棋に凝った殿様が家来相手に将棋を指すが、我儘の言い放題。『笠碁』のように、一手待てなんていうようなレベルじゃない。飛車が敵の陣内に入り込めないとなれば、相手の駒を飛び越す(お飛び越し)。それは出来ないと言われると、その駒をどけろと言う(お取り払い)。しかもその駒はよこせなどという始末。自分の駒を相手が取ろうとすると、「取ってはならん」。「その駒はしばらく動かしてはならん」と勝手放題。ついにご意見番の三太夫が殿様の将棋の相手をして殿様を打ち負かすという噺。この噺、面白いと思うけれどなぁ。

 実に柳家らしい楽しい落語二席だった。『将棋の殿様』のマクラで、昔よく歩の駒が一個無くなってしまい、紙で歩の駒を作ってやったり、ボタンで代用したりなんていうことをしたと話していたが、私たちも子供のころ、そんな駒で遊んでいたっけなと思いだした。みんな同じだね。

4月11日記

静かなお喋り 4月10日

静かなお喋り

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