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客席放浪記

柳家小三治独演会

2012年11月13日
浦安市文化会館大ホール

 柳家喜多八の弟子の柳家ろべい。弥次さん喜多さんに合わせて、弟子の名前を弥次郎兵衛にしたかったらしいのだが、となると喜多八の前になってしまう。しかもまだ半人前とのことで弥次を取って、ひらがなで、ろべいになったとのこと。真打になって弥次郎兵衛を目指して欲しい。「今更言う事もありませんが初代です」。噺は『元犬』

 思い返してみれば、柳家小三治を聴くのは久しぶりだ。前に置かれた湯呑から一口すすってから、おもむろに話し出すこの瞬間、「今日はどんなマクラが聴けるんだろう」というこの期待感が小三治を聴く楽しみだ。
 江戸っ子の定義の話から、江戸の三大祭の話へ。深川、神田、山王が入って、なんで三社が入らないのかといった話題で笑わせ、四神剣の話が始まったので、「おっ、一席目は『百川』か」と、うれしくなる。料亭の百川のあった場所は、だいたい見当が付くし、噺に出てくる三光新道は私の住むところからほど近い。聴いていて妙に親近感の湧く好きな噺だ。小三治版の百兵衛の「う〜ひぇ」と言う声を聴くと、それだけでニヤッとしてしまう。このとぼけた味がなんとも楽しいんだなぁ。

 仲入りが入って二席目。
 銀行で、振込み詐欺に引っかかったらしいおばあさんを目撃した話から、墓の管理料を八年間知らずに滞納していた話など。はて、これはなんのマクラかと思っていると石川五右衛門の話になる。
 「京の河原で釜茹でになったといいますが、五右衛門は油の入った釜で茹でられたらしい。油なら茹でるじゃなくて揚げるでしょ。それがなんで釜茹でと言うかというと、どうも京のうどんやさんからクレームが付いたらしい。釜揚げうどんというのがあって、どうも具合が悪い。それで油の入った釜に入れられても釜茹でという事になったらしい」 へえー。
 とすると、泥棒の噺か。と思っていると『転宅』へ。なるほどー。振込み詐欺ではなく結婚詐欺みたいな噺だもんなぁ。女に縁のなかった男がコロリと騙されるって今も昔も変わらない。レンタンで殺されなかっただけマシってところか。

 小三治を聴くというのは時間を忘れる快感がある。どこへ行くのかわからないマクラ。ゆったりしてとぼけた人物たち。その時間の中に身を置くことがなんとも贅沢でのんびりとできるんだ。

11月17日記

静かなお喋り 11月13日

静かなお喋り

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