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客席放浪記

第15回桂九雀の落語道楽

2015年7月30日
道楽停

 新宿二丁目にある[道楽亭]のことは以前から気になっていた。基本、落語会と懇親会がセットになった催しを毎晩開催している小さな小屋。面白そうな企画が目白押しで行ってみたいとは思っていたのだが、なにしろ場所が新宿二丁目。あまり夜遅く足を踏み入れたくない場所だ。今回、桂九雀の会に小宮孝泰さんがゲストで出るとのことなので行ってみることにした。新宿二丁目に入った途端にヤクザ同士の喧嘩を目撃。ヤバイ場所だなあ。それが、[道楽亭]に入ると、そこはアットホームな雰囲気の落ち着ける空間だった。

 この[道楽亭]での桂九雀の会、今回からはプロではないが落語好きの有名人をゲストにするという企画がスタートする。「小遊三師匠が言うように、落語って意外と簡単じゃないかというのがバレちゃったみたいですね」と笑いを取る。九雀は素人さん相手に落語教室もやっているそうで、なかに『阿弥陀池』を教えてくれという生徒さんがいたそうで。九雀はそれまでこの噺を持っていなかったが、それをキッカケに自分も演るようになったと言って、一席目は『阿弥陀池』。この噺は東京では『新聞記事』という噺に直されてかけられている。「糠に首」という洒落がグロテスクな『阿弥陀池』を嫌ったのかも知れない。しかし上方落語の『阿弥陀池』はパワーがあるなぁ。『新聞記事』に慣れてしまうと『阿弥陀池』のごり押しは新鮮で面白い。

 ゲストの小宮孝泰は、上がった途端、「落語は意外と簡単なんかじゃありません」。そうだよなぁ。「子供のころ、夏休みが大好きでしたが8月15日が過ぎると、もう夏休みも終わっちゃうなぁと思ったものです」と語り、その理由はテレビで日焼けオイルのCMから秋のお肌のケア用品のCMに切り替わるからだと述べた。なるほどねぇ。そこから季節の落語『青菜』。小宮さん、すでに17席噺を持っているそうで、これは毎年恒例、今年は9月に行われる、ごらく亭でかけるものをここで試してみたらしい。プロ顔負けの、いい味わいの『青菜』。9月にはもっと磨きがかかったものを期待できそう。

 九雀二席目の『足上がり』は上方でも、今やほとんど演る人がいなくなってしまったという珍品。というのも、足上がりという言葉自体が死語となってしまい意味がわからないから説明の必要があったり、五十銭と一銭の硬貨の大きさが同じだったという説明が必要だったり、最後は芝居話になるというやっかいな噺だからだそう。その苦労の割にはそれほど面白くはない。それでも珍しい噺が聴けて得した気分。

 トリの噺は『船弁慶』。これも上方なればこその噺で、私は聴くの初めて。下座も入って賑やかな噺だなぁ。東京の落語を聴き飽きても、まだ上方落語は知らない噺がたくさん残ってそうだ。

7月31日記

静かなお喋り 7月30日

静かなお喋り

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