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客席放浪記

第3回きよんとちば 昼の部

2017年7月10日
紀伊國屋ホール

 千葉雅子が古典落語に挑戦し、柳家喬太郎が千葉が書いた落語に挑戦する会の3回目。

 客席は、千葉が書いた落語がどんな噺で、喬太郎がそれをどう演じるのか、そして千葉が古典落語をどうしてみせるのかの興味で集まってきているお客さんでいっぱい。開口一番で上がった喬太郎の弟弟子、柳家小太郎は、盛んにアウェイ感を訴えていたが、気を取り直してか、『おすわどん』。

 そこへいくと柳家喬太郎はむしろホームと感じたのか、一席目は落語協会の北海道10日間巡業の話などをマクラでしてから『粗忽長屋』

 千葉雅子、今回は『禁酒番屋』だ。これは難しい噺を選んだものだ。なにしろ出て来るのは男ばかり。女は一人も出てこない。しかも武士まで出てくる。さらには、おしっこまで出てくるから、女性がこれをやるにはハンデが大きすぎる。しかも落語が本職ではないとすると・・・。う〜ん、よく演ったという感じだけど、やはり噺を選んだ方がよかったのではないか。確か1回目の時は『転宅』で、これはすごくよかった記憶がある。

 仲入りを挟んで、いよいよ喬太郎の千葉雅子作『秘境温泉名優ストリップ』。この噺にはストリップが出てくるということで、ストリップの話がマクラ。言われてみると都内の繁華街にはまだストリップ劇場がけっこう残っているのに気づかされる。上野、浅草、渋谷、池袋、新宿。前を通ったことはあるが、浅草ロック座以外は入ったことが無い。喬太郎も学生時代に田舎の劇場に一度入ったきりだそうで、「今度一度入ってみようか。そんな私を劇場で見かけても『喬太郎さんでしょ』と話しかけないでほしい」とマクラを結ぶ。この一言が噺の方にも影響してくる構成なのだから、上手いマクラだ。
 「秘境温泉」、「名優」、「ストリップ」と、まるで三題噺から生まれたような噺。『水戸黄門』の助さん、格さん役を20年務めた老優。今は仕事もあまりなく、私生活でも離婚状態。娘からは養育費が滞っていると脅されている。
 そんなとき、また『水戸黄門』が制作されるとのウワサを耳にし、いよいよ今度は自分が主役になれるとなぜか思い込んでいるのだが・・・。今度の黄門役は別の人に決まり、彼はフラフラと電車に乗って旅に出る。着いた先は秘境の温泉。そこにはストリップ小屋があり、昔女優で今は80代になっている人が、ストリッパーとなって踊っていた。
 宿の主人のキャラクターが面白くて、その接客態度に笑ったりしながら、いよいよクライマックスはストリップ。白い着物に袖口から赤い襦袢が見えていたが、これがやりたかったのか。
 真っ赤な襦袢一枚になったところで、サゲの台詞もなく幕が下りてくる。まさに演劇的な終わり方で、幕が閉まっても拍手が鳴りやまない。再び幕が上がって「帰って下さい」。
 なんかすごいものを観たという気がした。

7月14日記

静かなお喋り 7月10日

静かなお喋り

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