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客席放浪記

特撰花形落語会
柳家喬太郎・柳家三三二人会


2016年6月5日
サンポール荒川

 先月二ツ目に昇進した三遊亭わん丈。今日は黒門付き姿でうれしそう。
 『寄合酒』にも、いろいろ工夫をこらしてあって、二ツ目になったんだという意気ごみを感じる。お金をいくら持っているかと尋ねられた連中。「保育士のいない保育所」「なんだそれは?」「ほぼゼロ」「そっちは?」「年下の女性に世話になっている高齢者」「なんだいそりゃ?」「ひもじい」「笑点の大喜利やってんじゃないよ」

 「北海道で置き去りにされた男の子、無事に発見されてよかったですね。あの子の気持ちわかるんですよ。私もよく広いホールで、私一人だけお客さんから置き去りにされることありますから」。柳家喬太郎が、こんなツカミで笑いを取る。
 一席目は『初音の鼓』なのだが、本題に入る前が長い。殿様が珍しいものが好きで、いろいろと集めた変なものを虫干ししている。この部分は初めて聴いたから喬太郎独自の創作かもしれない。
 三太夫が「コン」と鳴くところは、恥ずかしいという思いから、躊躇してからおもむろに「コン」と鳴く。それがやがて慣れてきて「コンコンコンコン、スココンコン」となったときには、もう吹っ切れているのが可笑しい。

 柳家三三は喬太郎から「三三師匠は、このあと鈴本の昼のトリに出ることになっておりまして、ここはやっつけ仕事です」と言われていた。高座に上がるとマクラもなくスッと噺に入ったから、時間を気にしているのかと思ったが、噺のなかで喬太郎が前方でやったマクラや噺を、いつになく拾って入れ込んで笑いを取る。
 『夢の酒』が始まったなぁと思っていたら、ところどころ微妙に違う。「あれっ?」と思ったら、別の方に行って、またく別のサゲ。{あれ? なにこれ?」と思って、あとで貼りだされた演目を見たら、『橋場の雪』。『夢の酒』とは同じ出所の噺だが、また別もの。今は三三くらいしか演じ手はいないのかもしれないが、いい噺だなあ。

 仲入り後は柳家三三『お血脈』。地噺で脱線が多いが、こういうことをやらせても三三は上手い。「前座に『プラチナって知ってるかい?』と言ったら『彼女にプラチナのネックレス、プレゼントしました』だって。前座のくせに金持っている上に彼女がいるなんて、プラチなやつだ」。こんなのはお手のもの。
 鈴本、16時上がりの三三、15時37分に楽屋に消えて行った。

 柳家喬太郎がここで何をやるか。ここはこの流れだと、古典の大きなネタ。しかもあまりしめっぽい人情噺は向かないだろうなと思っていたら、ああ『竹の水仙』できたか。
 それまでの『竹の水仙』を喬太郎風にアレンジを加えたことにより、またひと味違ったものにしている喬太郎の『竹の水仙』。もうこの人のオハコといっていいだろう。大きなホールを笑いの渦にし、そして感動の余韻を残して緞帳が降りていく。

 今、お金を払って観に行って、絶対にハズレのない二人が揃った会。お客さんで満員になるわけだ。

6月6日記

静かなお喋り 6月5日

静かなお喋り

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