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客席放浪記

愛山・喬太郎二人会

2016年6月30日
お江戸両国亭

 開口一番前座さんは、三遊亭けん玉『ん廻し』。前座修業頑張ってね。

 神田春陽は、なんとこの出番で怪談。『小夜衣草紙〜蛤の吸い物〜』。死んだ花魁が、若旦那の婚礼の夜に化けて出てくる。いろいろいたずらをしたり、寝床に現れたり。これは怖いよ。客電が明るすぎちゃって台無しだけれど、暗いところでやったら、これ、相当に怖い。死んだ女に恨みを買ったら結婚もできない。あな恐ろしや。

 柳家喬太郎の一席目は、伊勢志摩サミットの話題から、職務質問といったマクラで自然な流れで『禁酒番屋』
 酒屋に無理を言って酒を飲み、屋敷に酒を持ってこさせる侍近藤の描写が、実に嫌な奴。ただのカワイイ酒好きじゃない。「そんなに屋敷に持ち込みたければ、酒屋に届けさせないで、自分で持っていけ!」と言いたくなってしまう。最後は庶民のちょっとした復讐物語になるので、汚い噺ではあるけれど、好きなんだなぁ、この噺。

 神田愛山の一席目は『天保水滸伝 三浦屋 孫次郎の義侠』。今月初めに松之丞の、ひとり天保水滸伝でも聴いたばかり。松之丞は愛山からこの噺を習ったと言っていたから、これが元になったもの。松之丞の熱の入った語り口とはちょっと違った、どちらかというと静かな語り口で、疲れないで(笑)聴ける。

 仲入り後、神田愛山二席目。若いころから演芸が好きで自分もやりたくて講釈師になったそうだ。漫才も好きだったが人付き合いが嫌で、独りでできるものと思ったそうだが、いざ講談界に入ってみると横のつながりも面倒だとぼやいてみせて、新作講談『ご近所大戦』
 大学准教授になった男。ひとり静かに本を読む生活がしたくて郊外に一戸建ての家を借りて住むことになるが、町内会の付き合いに辟易してしまうといった噺。そういうのが煩わしい人は、やはり集合住宅に住むしかないんだよね。

 柳家喬太郎のトリは、今月亀有で聴いた諏訪湖の遊覧船のマクラ。そこから旅というテーマが浮き上がってきて、これまた亀有のときと同じ『抜け雀』と思って聴いていたら、旅の絵師が絵を描くところで屏風ではなく土管。「あれ?」と思ったら、これは『抜け雀』ではなく、『抜けガヴァドン』の方。土管から抜け出した怪獣が街を破壊し始める。もうその可笑しいことと言ったら。ナマで聴いたのは初めて。『抜け雀』なんかよりよっぽど面白い。街だけじゃなく古典まで破壊しつくしちゃったね。ウハハハハ。

7月1日記

静かなお喋り 6月30日

静かなお喋り

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