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客席放浪記

特撰落語会 桂雀々・柳家喬太郎

2016年12月18日
一ツ橋ホール

 開口一番前座さんは、桃月庵はまぐり『手紙無筆』。前座修業頑張ってね。

 桂雀々、一席目。南の島に落語会に行ったときの孔雀騒動を語るマクラが、いかにも大阪人の笑いで、グイグイと押してきて爆笑を取る。こういう笑わせ方は東京にはない。
 その勢いで『手水廻し』。これもマクラの笑いと通じるものがあって、この押しの強さは、東京の古い人間には受け入れがたいかもしれない。しかし今の若い人にはテレビの影響か、抵抗なく受け入れられるようになった感じ。

 雀々の熱演に、「もうお腹いっぱいでしょ?」と柳家喬太郎
 「親子は一世、今生で終わりですが、夫婦は二世、つまり来世になっても続くっていうんですが、冗談じゃないですな」と笑いを取り、今年流行った「不倫」について語る。「以前は浮気って言ったものですが、今は不倫なんていいますな。不倫の、りんというのが心地よいのでしょうか?」。なるほどね〜、「浮気」って手あかのついた言葉に対し、「不倫」って、なんか文学的というかロマンを感じてしまうのかも。
 「不倫」というより落語の世界では「間男」なんていう。間男の小噺から『紙入れ』へ。
 喬太郎の『紙入れ』を聴くのは二年ぶり。噺に入って羽織を脱ぐのは、おかみさんの登場のところ。若い男から、こんな関係はよくないと切り出されて、紐を解いておいた羽織をスッと肩から下げる。これがおかみさんが着物を脱ぐしぐさを連想させ色っぽいこと。前回観た時は、羽織の紐を口に咥えてこちらを見る様がゾクゾクするほどの色っぽさだったが、今回は、羽織の紐を、それぞれ両手で持ってグルグル回し、「私、棄てられるのかな〜」。太った中年男を通して、なぜかやけに妖艶な女性が見えてくる瞬間だ。

 仲入り後、喬太郎の二席目は『蒟蒻問答』。喬太郎の『蒟蒻問答』を聴くのは、おそらく私はこれが初めて。あまりいじっていないストレートな『蒟蒻問答』だが、安心して聴いていられる、きれいな『蒟蒻問答』。別にいじらなくてもね面白く聴かせられるという自信の表れかもしれない。

 雀々、トリのネタは『一文笛』。この噺、演じ手によっては、なんだか重ったるい噺になりがちで、私はそれほど好きになれないのだが、雀々は、さすがですね。あまり嫌な印象にならない語り口で最後まで持って行った。やはりこれはこの人の個性なんだろうなぁ。

12月19日記

静かなお喋り 12月18日

静かなお喋り

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