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客席放浪記

喬太郎・文蔵二人会

2017年5月31日
新宿末廣亭

 喬太郎・文蔵二席ずつで、仲入り前に文蔵が『猫の災難』、仲入り後、トリで喬太郎が『首ったけ』をネタ出ししていたが、始まってみれば、これが予定とは少し違ってきた。

 開口一番、前座さんは文蔵の弟子橘家門朗『元犬』。「おもとオチ」ではなかった。あの「おもとオチ」は私はあまり好きになれないので。こちらでよかった。それにしても、いつも思うのだが文蔵のところのふたりのお弟子さんは実にしっかりした噺をするなぁ。前座修業頑張ってね。

 二ツ目になって五年だという柳亭市弥。今日は師匠の市馬の[浅草演芸ホール]での余一会だということを忘れていて、こちらの仕事を受けてしまったとか。噺は『かぼちゃ屋』

 柳家喬太郎は出てくるなり、ネタ出ししてた『首ったけ』を先にやると宣言。ところがなかなか『首ったけ』に入らない。「やる気はあるんですよ。でも奥の方に入ってしまっていて、なかなか出てこない」と、映画『スプリング、ハズ、カム』の裏話を宣伝を交えながら語ったりして、「怒ってます?」と客席に問いかける。大爆笑。この長いマクラを面白く聴かせてしまうところが、この人の話術の巧みさ。小三治の蘊蓄マクラと違って、別になんのためにもならないのが気楽に聴けて楽しい。ようやくマクラから『首ったけ』に入ったかと思えば、いきなり脱線して吉原ソープ街へバスで行った話が入ってしまったりして、これがまた可笑しい。よく考えたら『首ったけ』は15分。マクラで調整してたのかも。

 橘家文蔵は、ここでネタ出ししてある『猫の災難』の予定が、お馴染みさんに祝儀まで渡され、『子別れ』をリクエストされたとかで、急遽ここで『子別れ』。本当は『猫の災難』と、もう一席は短い『馬のす』だったらしい。マクラは無しで、すぐに『子別れ』。亀ちゃんが斉藤さんの子供に殴られたという話を父親にするや、おとっつぁん、斉藤さんの家を睨みつけ、「いつかお礼参りに行ってやる」。文蔵らしいおとっつぁんになった。

 仲入り後、すっかり前半で時間が押した形になってしまったので、文蔵は二席目の『猫の災難』もマクラ無しで入る。自分が勝手に酒を全部飲んじゃったくせに、それを「兄ィがなかなか帰ってこないからいけないんだ」という勝手な言い訳にする熊さんが、どこか可愛いのだが、やっぱりあんた自己チューだよ〜。

 ホームランの漫才。いつも寄席では15分程度の持ち時間だが、今日は少し長め。「韓国の朴大統領が捕まりましてね。朴だけにパクられた」なんていう時事ネタも入れ、最後は『シャバンシャバン』。この曲知らなかったけれど、韓国のパク・ヒョンビンの大ヒット曲なんだね。

 喬太郎、客席が『シャバンシャバン』が大受けで、「どうしましょ」と言って笑わせた。それというのもトリのネタを『名人長二 仏壇叩き』に決めたかららしい。このやや重い噺に入るには、前方(まえかた)が受けすぎた感じ。しかし時に遊びを入れてみたりしながら、キッチリと演り切った。もう何年か前から持ちネタにしているらしいが、私は喬太郎聴くのは初めて。いつか喬太郎で『名人長二』の通しを聴いてみたいなぁ。

6月1日記

静かなお喋り 5月31日

静かなお喋り

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