第二十三回東西笑いの喬演 2017年10月7日 国立演芸場 23回続いた、この笑福亭三喬、柳家喬太郎の二人会も今日で幕を閉じることになった。 いつもは前座さんが開口一番で一席務めてきたが、今日は前座さんの噺は無しで、三喬、喬太郎に、世話人の山口一儀さんも加わって、今までの思い出話の鼎談。喬太郎が大阪の山口さんへのお礼に、とらやの羊羹を送ったら、とらやは京都のお菓子屋だったこと(私もとらやは銀座だと思っていた)。その羊羹を切って食べようとして山口さんが手を切って血だらけになってしまったことなど。25分ほどの楽しい鼎談になった。 最後の日の今日は、ふたりとも長講を一席ずつ。 三喬は『らくだ』。『らくだ』は好んで演じる人と、自分はやらないという人にはっきり分かれる演目のような気がする。三喬も自分ではやらないつもりが、人に頼まれて演るようになったとのこと。まずネックになるのは尺。普通に演って50分かかる。寄席のトリ用のサイズにしてどう削っても最低でも40分はかかるだろう。三喬のはざっと1時間10分あった。 この噺を削るには、後半の焼き場の部分をカットするか、前半の長屋の月番や大家、漬物屋の部分を詰めるかする。今日聴いたのはどこも詰めずカットせずのフルバージョンだろう。 私は『らくだ』を東京のものでしか知らなかった。酔った屑屋が身の上話を始め、実は自分は以前は大きな商売をしていたのが酒に溺れ、身上を潰し、女房子供と貧しい長屋暮らし。ついに奥さんとも死に別れ、後添えを貰った相手は貧乏に強かったというくだり、娘に酒を買いに行かせて雨のなか子供がずぶぬれになって酒瓶を抱えて帰って来たとかの打ち明け話は初めてだったがいいものだ。また三喬だとこれをサラッと演ってみせる。これ、泣きで聴かせられたら、ちょっと重かったかもしれない。 喬太郎は、一週間後に迫った芝居の稽古でダメ出しが一杯出されるといった話をしたあと、「『双蝶々』とネタ出ししてありますが、これは、じゅげむと読みます」とか「『夜の慣用句』にしておけばよかった」とか「寒空はだかさんのような、耳には残るが心には残らない噺をする」。「先代正蔵や円生と較べないでほしい」といった言い訳をたくさんしてから(アハハハハ)、『双蝶々』。 長吉の子供時代の『上』から入り、中盤の『定吉殺し』は見ものだった。定吉の首を締めて行くくだりの緊迫感は、今まで私が観た『双蝶々』のなかでは一番だろう。客席も咳ひとつ聞えずシーンと静まり返っていた。 番頭の『権九朗殺し』はカットして、『雪の子別れ』へ。鳴り物が入っての芝居噺の演出は、あまり芝居噺を演らない喬太郎だから、やや見劣りがするが(って、私も歌舞伎って観ないけれど)、珍しい喬太郎が観られた。 さすが喬太郎、見事な『双蝶々』だ。 10月8日記 静かなお喋り 10月7日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |